[ オピニオン ]
(2017/2/9 05:00)
環境負荷が大きい小規模火力発電所の新増設に、どう歯止めをかけるのか。環境省は「小規模火力発電等の望ましい自主的な環境アセスメント実務集」をまとめたが、実効性には疑問符が付く。
東日本大震災後の電力需給逼迫(ひっぱく)対策と、電力自由化による新規参入を目的に、安価な石炭を燃料とする火力発電の計画が相次いでいる。出力11万2500キロワット未満の火力発電は環境影響評価法の対象外。一方で石炭火力は二酸化炭素(CO2)排出量が多いし、小規模なほど効率を上げにくい。
環境省は2014年度から、有識者会議でこの問題の検討を始めた。当初は石炭火力の新設を抑制しようという意図が強かった。曲折を経て、自主的な環境アセスメントの実施を促す“手引き”で終わった。
法体系を大きく変えるには相応の時間がかかるし、規制強化による社会的影響も無視できない。アセスメントは本来、事業者に適切な環境配慮を求めるのが趣旨。落ち着くべきところに落ち着いたともいえる。
事業者が実務集に従うかどうかは分からない。ただ電力自由化によって消費者は小売り事業者を選べるようになった。エシカル消費(倫理的消費)が企業行動を左右できることも、肝に銘じたい。
(2017/2/9 05:00)