[ 政治・経済 ]
(2017/2/10 12:00)
【ロサンゼルス時事】イスラム圏7カ国国民らの入国を一時禁止した米大統領令を暫定的に差し止めたシアトル連邦地裁命令の是非をめぐり、サンフランシスコ連邦高裁は9日午後(日本時間10日午前)、地裁命令を支持し、トランプ政権側からの取り消し請求を退けた。当面は7カ国からの入国が可能となり、テロ対策の柱として入国禁止を打ち出した政権には打撃だ。
トランプ大統領は、連邦高裁が判断を示した直後、ツイッターに「法廷で会おう。国の安全保障が危機にひんしている」と投稿した。政権側は最高裁への上訴を検討するとみられ、法廷闘争は継続しそうだ。
高裁は判断の理由として「移動の自由、家族離散の回避、差別から逃れる自由における公共の利益」を重視。判事3人が全員一致で地裁命令を支持した。うち1人は共和党のブッシュ元大統領(子)に選ばれた。
勝訴したワシントン州のファーガソン司法長官は「完全な勝利だ」と強調し、大統領令の撤回を求めた。
政権側は7日の口頭弁論で「大統領による安全保障上の判断を覆した」として直ちに地裁命令を取り消すよう要求。地裁、高裁で入国禁止措置の一時解除を勝ち取ったワシントン州側は、地裁決定を取り消せば、「国はカオス(大混乱)状態に戻る」と訴えていた。
トランプ氏は1月27日、テロ対策として、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンの7カ国国民の日間の入国禁止を柱とした大統領令に署名。難民受け入れ計画の120日間凍結やシリア難民の無期限受け入れ停止も盛り込まれた。入国禁止措置は直ちに実施され、国内外で大きな混乱と反発を招いた。
大統領令に対し、ワシントン、ミネソタ両州が「憲法違反」として提訴。これを受け、地裁は今月3日、「(社会や経済活動に)取り返しのつかない損害が発生する」と判断し、大統領令を暫定的に差し止めるよう命じた。
「完全勝利」と喜びの声、司法関係者や市民団体
【ニューヨーク時事】「完全な勝利」。イスラム圏7カ国国民らの入国を一時禁止した米大統領令の復活を認めなかったサンフランシスコ連邦高裁の決定を受け、訴訟関係者からは喜びの声が上がった。
訴訟を提起したワシントン州のファーガソン司法長官は記者会見で、「完全な勝利」と歓喜。「米国は法治国家だ。大統領であっても法律は適用される」と強調した。CNNテレビなどに電話を通じて出演した州側弁護士のパーセル氏も「うれしい」と語った。
米各地で大統領令の無効化を求める訴訟を起こしている団体も高裁判断を評価した。市民団体「全米市民自由連合」(ACLU)は大統領令を「常軌を逸し、大混乱を招いた政府の試みは、罪のない個人やわが国の価値観、世界における米国の評価を大きく損なった」と批判した上で、「非米国的な大統領令が永久に解除されるまで闘い続ける」と決意を新たにした。
一方、米メディアは高裁の決定が民主、共和両政権下で選ばれた高裁判事3人の総意だったことを大きく報じている。こうした中、クリントン元国務長官は、ツイッターに「3―0」とだけ書き込み、決定への支持を表明した。
トランプ氏「法廷で会おう」、高裁判断に対抗措置へ
【ワシントン時事】イスラム圏7カ国からの入国を禁止した問題で、トランプ米大統領は9日、大統領令の差し止めを支持した連邦高裁の判断を受けてツイッターに「法廷で会おう。国の安全保障が危機にひんしている」と投稿し、法廷闘争を継続する方針を明言した。
米メディアによると、トランプ氏は記者団の前で、高裁判断を「政治的な決断」と批判した。その上で「われわれは法廷闘争で勝つ。とても容易にだ」と強調し、大統領令の復活を目指す考えを示した。
一方、司法省の報道官は米メディアに対し、高裁判断を吟味し、対抗措置を検討すると語った。トランプ政権側は最高裁に上訴することが可能だが、最高裁がどのように対応するかは不透明だ。
(2017/2/10 12:00)