[ オピニオン ]
(2017/2/14 05:00)
実質国内総生産(GDP)のプラスは歓迎だが、これが経済の力強さを示した結果とは言い難い。
内閣府が13日に発表した2016年10―12月期のGDP1次速報は、実質年率1・0%増だった。7―9月期よりわずかに減速したものの、4四半期連続のプラス。16年暦年も実質1・0%増となり、日本経済は12年から5年連続で実質成長を記録した。
統計は、決して不景気ではないことを示している。しかし産業界の実感に比べて、ややズレがあるのではないか。5年連続プラスという好景気が、地方経済や中小企業にまで及んだとは言い難い。
外需の寄与度は7―9月期にプラス0・4%、10―12月期が同0・2%。これに対して内需は7―9月期がマイナス0・4%、10―12月期は同0・0%で、成長の足を引っ張っている。昨秋以降の“トランプ相場”や米経済の好調が、失速気味の日本経済を下支えしたといえる。
これは安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の初期に、輸出型大手企業が先行して業績を回復したのと似た構図だろう。今後は外需で得た利益を、取引先の中小企業や従業員に還元することで経済の好循環を起こそうという官邸の圧力が再び高まることが考えられる。3月の春季労使交渉(春闘)の賃上げにも影響が及ぶだろう。
ただ日本経済の再生は、こうした外需依存のままではなし得ない。為替が円高に振れた15年にはGDPが一進一退を繰り返し、企業マインドも大きく低下した。GDPのプラスが続くようになっても、16年夏頃までは踊り場感が強かった。
政府が進める働き方改革や、産業界が主導した“プレミアムフライデー”も中長期的には内需を拡大しよう。ただ即効性を期待するのは難しい。投資拡大と消費喚起の知恵が必要だ。
政府は年央にも「新・成長戦略」をまとめる考え。ここで第4次産業革命や岩盤規制の打破を通じた規制改革を深掘りし、内需の着実な回復を図ることを求めたい。
(2017/2/14 05:00)