[ オピニオン ]
(2017/2/22 05:00)
福島県いわき市で「デジタル・グリッド・ルーター(DGR)」を用いた自律分散型エネルギーシステム実用化開発事業が始まる。東京電力福島第一原子力発電所の事故で被害を受けた浜通り地域の新技術・新産業の創出に向け、経済産業省が推進する福島イノベーション・コースト構想の新技術の実用化開発プロジェクトの一つだ。
DGRは東京大学大学院工学研究科の阿部力也特任教授が開発した電力制御システム。グリッドは送配電網、ルーターはインターネットを流れる情報をそれぞれのコンピューターなどの端末に振り分ける装置だ。DGRは電力の種類を識別し、どの電力を「どこから」「どこに」「どれだけ」「どの経路で」融通するかを自動で仕切る電力版のインターネットだ。需要家同士で電力の融通もできる。
佐藤燃料(福島県郡山市)が代表になり、小規模の実証を手がけている立山科学工業(富山市)、東京大学などのグループで実施する。いわき市にあるサンフレックス永谷園の本社工場と鹿島工場に太陽光発電、ディーゼル発電機、蓄電池などを備え、系統も含めて受電し、両工場間での融通も実施する。
太陽光や風力はお天気任せで変動の激しいエネルギーだ。電力会社の系統に大量に流れ込むと電圧や周波数の調整が難しくなる。だがDGRはセルと呼ばれる電力網単位で自立しているため、電力会社の系統に負荷をかけることはない。
このためDGRを使えば、再生可能エネルギーの大量導入が可能になる。福島県は「原子力に依存しない、安全・安心で持続的に発展可能な社会」を目指し、2040年までに県内で必要なエネルギーと同じ量を再生可能エネで生み出す目標を掲げている。DGRはこれを実現する大きな武器になりそうだ。
日本は温室効果ガスの排出量を50年までに80%の削減する方針を掲げている。この実現には再生可能エネの大量普及が欠かせない。ぜひDGRの実用化事業を成功させ、福島だけでなく日本全体、さらに世界での普及を図ってほしい。
(2017/2/22 05:00)
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