[ オピニオン ]
(2017/3/28 05:00)
「当時の開発者が感銘を受けたのがアポロ計画だった」―。ホンダが36年前に世界で初めて実用化した地図型自動車用ナビゲーションシステムについて、社長の八郷隆弘さんが逸話を明かす。
モータリゼーションの進展によって渋滞が深刻化。ガソリンや時間のロス、運転者が疲労を強いられる状況を憂慮して、大がかりな設備に頼らずに自動車自身が自分の位置情報を得られる方法はないか。
もちろん、まだGPSの衛星電波など存在しない。暗中模索する技術陣に希望を与えたのが米国のアポロ計画。地球から38万キロメートル離れた月面に着陸船を誘導する技術が、カーナビ開発のキモとなった。
ジャイロセンサーと距離センサーで、車の移動する方向と距離を検出して16ビットのマイクロコンピューターで計算。ブラウン管の画面にセットした地図シートに走行軌跡を映し出す。この初のカーナビは、世界最大の技術系学会である「IEEE」が歴史的業績を顕彰する『マイルストーン』に先ごろ選ばれた。
自動車業界からは初の選出という。もちろんホンダ技術陣を勇気づけた月着陸船も『マイルストーン』のひとつ。次はカーナビから、どんな技術が生まれるだろうか。人類の未踏への挑戦に胸が躍る。
(2017/3/28 05:00)