[ オピニオン ]
(2017/3/31 05:00)
上方落語の『さくらんぼ』、東京での題は『頭山(あたまやま)』。短気な男が種ごと食べ、頭から芽を出して立派な木が生えた。近所の人が頭山と名付け、花見で大騒ぎ。男は頭上がうるさくて木を引き抜いてしまう。
噺(はなし)には続きがあるが、この桜が実生であることに時代を感じる。接ぎ木で増やす園芸品種のソメイヨシノは、江戸の染井村から明治期に全国に広まった。古今、花は違えど人の浮かれ気分は変わらないということだろう。
31日は政府と産業界が推奨する2度目のプレミアムフライデー。ただ年度末最終日とあって、企業は深夜まで実績確保に追われかねない。「早くも試練だね。かけ声倒れになるんじゃないの」と意地悪な声。
いや、速断は禁物だ。落語の『長屋の花見』も『花見の仇討(あだう)ち』も、お天道様の下で熊さん八っつぁんが浮かれ出す。北上した桜前線に庶民の遊び心が動くはず。“桜の金曜日”は消費を喚起するか。
花は見るだけならば無料。飲食を考えても、落語の『花見酒』よろしく身内で飲み干して利益を残さないオチが頭をよぎる。ソメイヨシノのサクランボが食せないように、あまり実りはないかも。落語はカネに縁がないなあと嘆息したところで、お後がよろしいようで…
(2017/3/31 05:00)