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[ 自動車・輸送機 ]
(2017/4/6 05:00)
東京大学とトヨタ自動車、豊田中央研究所(愛知県長久手市)の研究チームは、燃料電池の性能劣化に、水による酸化が影響することを突き止めた。電池の内部に水が増えると、電極材料として用いる白金系ナノ粒子触媒が酸素と結びつきやすくなって触媒表面の酸化を促し、電池の性能が劣化する。白金量が少ない合金だと酸化しにくいことも分かった。酸化を抑えれば、燃料電池車(FCV)の走行性能のカギとなる燃料電池の性能向上とコスト削減につながる。
東大物性研究所の尾嶋正治特任研究員、原田慈久准教授、崔芸濤(サイ・イータオ)特任研究員らが、トヨタ、量子科学技術研究開発機構などと共同で、大型放射光施設「SPring―8」(スプリング8、兵庫県佐用町)のビームラインに高分解能のX線吸収分光装置を設置。燃料電池の電極内の白金系ナノ粒子触媒の酸化状態を1気圧の実環境で詳しく調べた。
燃料電池は水素と酸素を反応させて発電するが、その反応時に電極を水に浸す必要がある。実験で、電池特性に優れる直径2ナノ―3ナノメートル(ナノは10億分の1)の白金系ナノ粒子に水と酸素が共に吸着すると、表面の酸化が進むことが分かった。
この現象は理論的に予測されており、今回初めて実験により確認した。電極の酸素雰囲気中の水分量が増えると、燃料電池の実効電圧が降下して発電性能が数%低下することが知られている。今回の結果により、これが酸化によるものであることが裏付けられた。
一方、高価で希少な白金の使用量を抑えた直径約3ナノメートルの白金コバルト合金ナノ粒子でも同様に実験したところ、水による酸化の促進量は少なかった。水を排除する非水系の物質で覆った触媒を使ったり、白金コバルト合金粒子で白金粒子を代替したりすることによって、燃料電池の高性能化が見込める。
成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載される。
(2017/4/6 05:00)