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[ エレクトロニクス ]
(2017/4/14 05:00)
東芝が進める半導体メモリー事業の売却交渉が、混迷を深めている。メモリーの生産で提携する米ウエスタンデジタル(WD)が、メモリー事業の分社や売却に異議を申し立て、独占交渉権を要求したことが要因の一つだ。共同で行っている工場運営に支障が出るというのが主な理由だが、条件で劣るWDが有利な立場を得ようとしているとの見方もある。東芝関係者らからは「何で今頃話を持ち出すのか」と、ため息が漏れる。(政年佐貴恵)
東芝は2000年に米サンディスクと提携し、合弁会社を設立して四日市工場(三重県四日市市)を共同運営してきた。基本的に東芝が建屋の投資を負担し、製造設備は両社で折半する関係を続けてきたが、16年5月にWDがサンディスクを約170億ドル(約2兆円)で買収。これに伴いWDが協業関係を引き継いだ。
そんなWDが東芝のメモリー事業買収に動くのは自明の理だ。しかし実現には課題がある。一つはWDの資金力。一次入札にはWDのほか、米ブロードコムや韓国SKハイニックス、台湾・鴻海精密工業などが応じたとみられている。
2兆―3兆円の評価額を提示している企業もあるというが、巨額買収をしたばかりのWDは、提示額で劣っているもようだ。
もう一つは売却期限の問題だ。17年3月期に債務超過に陥る東芝は、18年3月期中の売却完了が最重要課題だ。しかしWDと東芝のNAND型フラッシュメモリー市場での合計シェアは33%超。独占禁止法の承認に時間がかかる点が懸案となる。
東芝側は「メモリー事業の分社や売却の手続きには問題がない」(幹部)との立場だ。ある関係者からは「入札に参加した立場での抗議は論理的でない」との意見も聞かれる。
東芝にとってメモリー事業の高値売却は再建の切り札だ。しかし政府、銀行、協業相手と外部の意向に翻弄(ほんろう)され、身動きは取れなくなりつつある。
(2017/4/14 05:00)