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[ エレクトロニクス ]
(2017/4/19 05:00)
東芝は18日までに、半導体メモリー事業売却に関する米ウエスタンデジタル(WD)の抗議について、対抗措置を取る方針を固めた。一方、産業革新機構は18日の会見で、東芝のメモリー事業への出資について検討を始めたことを明らかにした。東芝の再建の要であるメモリー事業の売却を取り巻く環境は、混沌(こんとん)としてきている。(政年佐貴恵、編集委員・鈴木真央)
【優位性主張】
WDと東芝はフラッシュメモリーの生産拠点である四日市工場(三重県四日市市)において、メモリーの生産や開発で連携している。東芝と米サンディスクが2000年に設立した合弁会社が工場運営をしており、16年にサンディスクを買収したWDが契約を引き継いだ。
WDは4月初旬、東芝のメモリー事業の分社や売却は、契約内容に反するとの意見書を送付。独占交渉権の要求や、協業関係に基づく交渉での優位性などを主張している。
【書面で意見表明】
一方で東芝側は、必ずしも契約内容には違反していないとの立場を示す。「他の1次入札者や今後の売却プロセスに影響を及ぼす」(幹部)として、対抗措置の検討を始めた。3月末に締め切った1次入札で提示されたWDの入札条件なども踏まえて、折衝を進める。近々、書面で意見表明をする方針だ。
東芝の半導体メモリー事業の売却の行方については、さまざまな動きが出てきている。志賀俊之産業革新機構会長は18日、半導体メモリーの新会社「東芝メモリ」への資本参加について、現時点で入札に参加していないものの「これだけ大きな案件であり当然、投資ファンドとして注目している」と語った。投資検討の正式なステージには至っていないと前置きしつつ「公開情報に基づき、社内でチームをつくって勉強している」(志賀会長)ことを明らかにした。
【最初のハードル】
投資に当たっては、成長性、革新性、社会的意義など産業競争力強化法に基づく投資評価基準を満たすかが「最初のハードル」(同)になる。入札に参加する場合は「単独ではできない」(同)と、他企業と組む考えを示した。経済界の反発などで議論は停滞しているが、日本企業を巻き込み、米国勢と2次入札に乗り出す可能性も否定できない。
同機構は近く、経営トップ直轄の「グローバル産業再編プログラム」を立ち上げ、組織的に案件創出を図る仕組み作りに乗り出す。電機業界とは明言しなかったが、現状「仮説として10業種」(勝又幹英社長)程度が産業再編の対象になっているという。
東芝は株主総会が開かれる6月に売却先を決定したい考えだが、先行きは不透明だ。東芝のメモリー事業にとって最良の道は何か、模索が続く。
(2017/4/19 05:00)