[ オピニオン ]
(2017/5/3 05:00)
日本国憲法の施行から70年を迎えた。この間、特に「戦力の不保持」を規定した第9条と自衛隊の存在を巡って、改憲論議が高まりつつある。戦後の日本人の多くが平和国家建設の象徴としてきた存在が9条であり、改正するとなれば国民的な議論が必要である。
先週、経済同友会の小林喜光代表幹事は「今の憲法には矛盾する部分もある。安全保障や憲法について議論を深める必要がある」と述べ、8年ぶりに憲法に関する委員会を設ける考えを示した。政策提言の作成も検討する。
同友会は2003年にも憲法改正を求める提言を行っている。一方で経団連は05年、「自衛隊の役割を明確にすべきだ」などと提言したが、明確に改正は求めなかった。日本商工会議所も同年、集団的自衛権について「日本も当然保有していると考えるべきだ」と、改正を求める報告書を作成した。ただ、その後は特に発言していない。
議論の中心は9条第2項「陸海空その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」という部分だ。政府は、侵略戦争を想定した文言で、主権国家としての固有の自衛権を否定するものではなく、自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められると「解釈」してきた。これに対し、経団連は05年の提言で「多くの解釈改憲がなされ、…これ自体が民主の理念に反する」と苦言を呈している。
日本人は第二次世界大戦後、再び戦争の惨禍を繰り返すことのないよう決意し、焦土から世界トップレベルの豊かな国を作り出した。日本人の勤勉さや教育レベルの高さなどが背景として挙げられようが、平和憲法のもと、国の政策目標や予算を「軍事」に振り向けず、「経済」にフォーカスできたことも大きな要因だろう。
内閣府の世論調査によれば、大半の国民は自衛隊は必要だと答えている。一方で各新聞社の世論調査では、改憲に賛成する声が多いとはいえない。国民の理解を得るには、より広範で本質的な議論が重要である。
(2017/5/3 05:00)
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