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[ 科学技術・大学 ]
(2017/5/7 14:00)
周囲の太陽光エネルギーだけで大気中に含まれる水分を取り出し、飲料水として使えるようにする技術を、米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)とマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが開発した。作製したプロトタイプの装置では、湿度20%という乾燥した環境下でも12時間で2.8リットルの水が大気から得られたという。水の入手が極めて難しく電力網もない砂漠のような場所に加え、一般家庭でも空気から飲み水を作り出せる新たな手法となる可能性がある。
この装置で大気から水を分離するのに重要な役目を果たすのが、有機金属構造体(MOF)と言われる人工多孔質体。その立体構造の隙間にガスや水分を取り込む性質を持つ。もともと20年以上前にMOFを発明し、この分野のパイオニアがUCバークレーのオマール・ヤギ教授(バークレー・グローバル科学研究所長)であり、同教授らが今回、金属ジルコニウムをベースとしたパウダー状のMOF-801を提供。MITのエブリン・ワン准教授(機械工学)らが極めて省エネルギー性能の高い水分抽出装置を開発した。
装置内のMOFの粉末が大気中から水分を吸収した後は、容器を透過する太陽光の熱で粉末から水蒸気を分離し、コンデンサー(復水器)で水に戻して蓄える仕組み。粉末から水分を遊離させるエネルギー源は太陽光でなく、焚き火でも構わないという。
実験では12時間で2.8リットルの飲料水を作り出すのに、1キログラムのMOF-801を必要とした。さらに、実験に使ったMOF-801は自重の20%までしか水分を保持できないが、倍の40%以上まで吸収率を高められる可能性があるという。
世界では全人口の約3分の2が何らかの水不足に直面し、一方で大気中には13兆キロリットルもの水分が存在すると推定されている。これまでにも大気や霧から水分を取り出す取り組みは行われているが、ある程度の湿度が必要で、しかも電力を使うため、高い運用コストが課題となっていた。研究の詳細は4月14日付の米科学誌サイエンスに掲載された。
(2017/5/7 14:00)