[ オピニオン ]
(2017/5/9 05:00)
「木から牛の餌をつくる」というプロジェクトが北海道北見市で進んでいる。牛の主食の粗飼料は稲わらや麦わらなどが中心だが、これに替えて地元の白樺(しらかば)やカラマツ、柳などを粗飼料にするプロジェクトだ。粗飼料は中国などからの輸入が多く、価格が高騰、農薬などの化学物質の付着のおそれもあり、安価で安全な粗飼料づくりを目指している。
北見市の廃棄物処理業、エース・クリーンの中井英治社長は、G―8インターナショナルトレーディング(神奈川県平塚市)が開発した200度C前後、1・2―2メガパスカルの高温高圧水蒸気で有機物を加水分解する亜臨界水反応装置を見て「廃棄物処理に使えないか」と考え導入した。ところが廃棄物処理は規制が厳しく、新しい処理法の導入には時間がかかる。
そんな時、1980年代に農林水産省系研究所が木質飼料の論文を発表していたのに気付いた。木質チップを亜臨界水で分解すれば飼料にできると思いつき、地元の牧場主や獣医師、林業家とプロジェクトを開始した。加水分解により15―30分ほどで木の成分が低分子化され、牛にとって消化や栄養吸収に適した状態になるという。
昨年度は道立の林産試験場や雪印種苗と組み、農業・食品産業技術総合研究機構の「革新的技術開発・緊急展開事業」に採択された。本年度から3年間は帯広畜産大学も加わり、「北海道の木質バイオマスからの飼料生産と給餌の実証研究」に取り組むことになった。
これまで白樺で行った試験では、従来の粗飼料と比べ、牛が好んで食べ、体重増加も大きく、肉牛の場合、霜降りに悪影響を与えるビタミンAの血中含有量も少なかったそうだ。また糞(ふん)便のしまりが良く、敷料の汚れが少ないことも分かった。
海外から高価な飼料を輸入しなくて済めば、畜産業の競争力が強化される。何よりも身近にある未利用バイオマス資源で地元の産業を振興する取り組みが注目される。亜臨界水反応装置とともに北海道の東の果てから全国に広げていってほしい。
(2017/5/9 05:00)
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