[ オピニオン ]
(2017/5/17 05:00)
「天災は忘れた頃にやってくる」という有名な警句は物理学者の寺田寅彦が残したといわれる。災害が起きた直後は皆、備えを十分にし、防災への意識も高まる。だが時がたち日常が戻ると、次第にその危機感は薄れていく。
世界中を襲ったサイバー攻撃もそのようなものではないか。平穏な日々に突然やってくる脅威。ウイルスがひとたび放たれれば一気にまん延し、たちまち日常をかき乱す。被害を受ければ生活は一変する。
今回の攻撃について、専門家は「最新の基本ソフト(OS)に更新していない機器が狙われた」と口をそろえる。ウイルス対策は面倒だ、パソコンは苦手で更新はしていない…。そんな備えのない機器が標的になった。
サイバーセキュリティーの国家プロジェクトの責任者も務める情報セキュリティ大学院大学学長の後藤厚宏さんによれば、セキュリティー業界では「何も起こらないことが成功」だという。何もないのが当然で、何かあれば大ごとなのだ。
寺田は随筆『天災と国防』の中で、平時における備えと災害教育の重要性を説いた。日常から準備し、ITを利用する誰もが一定の知識を身につける。いつか必ずやってくる攻撃に向け、対策を怠ってはならない。
(2017/5/17 05:00)