[ オピニオン ]
(2017/6/9 05:00)
最近、東京・自由が丘のバーに足を運ぶことが増えた。酒も飲むが、楽しみは音を聴くことだ。エルメック電子工業(新潟市北区)が開発したスピーカー「水琴」がお目当てである。
日本庭園でよく見かける手水鉢。排水口にかめを埋め、したたる音を響かせる仕掛けが「水琴窟(すいきんくつ)」だ。高感度センサーを手がける同社は、センサーに使うフィルムを高音用のツイーターに応用した。顧問の松永巖さんは「水琴窟のように澄み切った音が再現される」という。
ブルースやロックの愛好者が集まるバーは、スピーカーの音質評価にはうってつけだ。性能を引き出そうとスピーカーの場所を変えたり、どのような音源が向いているかを確認するため、ジャンルを変えて音楽を聴いたりする。
その音に一番魅了されたのは、店主の中津留誠さんかもしれない。「凝った音源に向いており、何度も聴いた楽曲でも新しい発見がある」とか。他のスピーカーと聞き比べられるようにし、客にパンフレットを見せたりするなど“営業”までする。
メーカーが情熱を持って送り出した製品は、自然とユーザーの心を揺り動かす。飽きずにオーディオ談義にふけるバーの店主と客の姿に、開発者も満足しているだろう。
(2017/6/9 05:00)