[ オピニオン ]
(2017/6/29 05:00)
近所のコーヒー豆屋が廃業した。豊富な生豆をそろえ、煎(い)りたての新鮮な各種ブレンドを少量で売ってくれる貴重な店だった。
今後は、どこでコーヒー豆を買うか。悩んでいたら「焙煎(ばいせん)機の売り先を聞いたらどうか」と、なじみの金属加工業の社長にアドバイスされた。今や転廃業が珍しくなくなった業界では、機械や設備を承継した企業に継続発注することはよくある。
豆屋の店主に問い合わせた。「焙煎機は知り合いに譲ったが遠方だ。近ければとっくに教えてるよ」と嫌みな口調。そうだった、この店主は口が悪い。「この豆は素人には早い」「今回はこのグレードにしとけ」―。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いだが、目利きは確かだ。
通信販売で煎りたての豆を買えることは知っている。でも顔を合わせてのコミュニケーションはできない。機械と材料と“オヤジ”。どれ一つ欠けても物足りないのが、モノづくりの世界というもの。
欧米には個人に焙煎機を時間貸しする「シェアロースター」というサービスがある。日本初をうたう店が、7月1日に大阪市内にオープンする。コーヒー豆の後継サプライヤーが決まらなければ、いっそ内製化もありか。オヤジを目標に勉強を始めるのも悪くない。
(2017/6/29 05:00)