[ ICT ]
(2017/7/3 05:00)
NECは複数の演算処理を同時に行う高性能な「ベクトル型コンピューター」を使った人工知能(AI)向けデータ処理技術を開発した。インターネット上の口コミや購買情報などのビッグデータ(大量データ)の分析を従来比50倍以上に高速化する。同社はベクトル型を開発する世界唯一のメーカー。従来は研究開発用途など高度利用が中心だったが汎用分野に売り込む。2018年中にも次世代の新型ベクトルプロセッサーを実用化する。
3日からオーストリアで開かれる「並列・分散コンピューティングに関する国際会議」(ISPDC)で5日に発表する。
AIの一手法である機械学習向け情報処理技術。ベクトル型は、1回に膨大な処理を行うことで効率がより高まる。この特性をいかし、大規模な行列に対して「行」と「列」の単位に分けて処理を行い、1回の処理量を大きくする手法を考案した。さらに、データを分割してプロセッサー間でやりとりする通信量を従来比20分の1に減らした。
これらの技術を導入したミドルウエアを開発し、機械学習で頻繁に使われる分類や集計などを行う分析ツール「スパーク」を適用したところ、従来比で50―1600倍程度の高速化を確認した。データ分析に使う汎用のプログラミング言語「パイソン」にも適用できる。
特別なプログラミングは不要。例えば、ウェブ広告の効果的な表示や商品の推薦、記事の自動分類などを少数のサーバーで短時間に行える。ビッグデータの活用などでデータサイズは増加傾向にある。現在は複数のサーバーをつないだ大規模なクラスターで分散処理を行うなど、処理コストがかさんでいる。
現在のコンピューターは、汎用の中央演算処理装置(CPU)を搭載した「スカラー型」が主流。ただNECは長年、スーパーコンピューターとして複雑な処理に向くベクトル型を開発してきた。今後は機械学習などのビッグデータ分析にも適用可能なことをアピールし、ベクトル型の用途拡大を目指す。
(2017/7/3 05:00)