[ ロボット ]
(2017/7/5 05:00)
空中からアプローチ
東京電力福島第一原子力発電所の1号機では使用済み燃料棒の取り出しに向けて最上階(オペレーティングフロア)の調査が進んでいる。大きな構造物の配置を調べるために、細かながれきは撤去する必要があった。この作業は大型クレーンの遠隔操作で行われる。クレーンを精密制御するために、清水建設はロボット技術をフル活用した。
【回転を制御】
地上のがれきはブルドーザーで集めて回収できる。ただ最上階のがれきは下手に崩すと、下の階や燃料プールの使用済み燃料棒に影響が出かねない。不安定に積み重なったがれきを慎重に解体し取り除く必要がある。ロボットががれきの上を走り回ることはできず、上空からのアプローチが採用された。
建築総本部の山崎忍上席エンジニアは「ロボットをクレーンで吊(つ)るして上から作業すれば安全」と説明する。ただ、吊るすと揺れるため、ケーブルの先のユニットが回転してしまい制御が難しい。そこで空中で回転を制御するベースマシンを開発した。ベースマシンに電源や通信機能、ファンを積み、ロボットを動かすための基礎ユニットとして活用する。
【幅広い作業実現】
初期のベースマシンでは左右にファンを配置して、プロペラで風を起こして回転を止めていた。調査作業ごとに改良を重ね、新しいモデルではファンの先にL字のダクトをつけている。風量は一定のまま、風向きだけ変えて力を微調整する。廣瀬豊主査は「風量調整よりも風向調整の方が制御しやすく、メンテナンスしやすい」と説明する。
このベースマシンに穿孔(せんこう)ユニットやがれき吸引ユニット、飛散防止剤吹き付けユニットなどを付け替えて、幅広い作業を実現してきた。穿孔ユニットは最上階の床をくり抜きコアサンプルを回収する。コアを落下させないよう、刃が貫通すると先端の羽が開いてサンプルを保持する。コアサンプルは汚染の深さ計測に活用された。
【運用第一に開発】
吸引ユニットはがれきを吸い込んで回収する。れんがのような重量物を吸引するため、吸い込む風速は毎秒65メートルにもなる。この動力源にはトンネル用の長距離送風機を採用した。このように、できるだけ特殊な技術開発は避け、既存の製品や装置を組み合わせてシステムを構築している。部品の調達性やメンテナンスの頻度など現場の負担を減らすためだ。
ゼネコンが開発する一つ一つの装置はロボットのようには見えない。ただ遠隔システム全体にロボット技術が盛り込まれ、現場での運用性が考えられている。山崎上席エンジニア「廃炉用のロボット技術は放射線を除けば、災害現場の技術と共通する。この技術や知見は必ず日本の役に立つ」と強調する。
(2017/7/5 05:00)
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