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[ 科学技術・大学 ]
(2017/7/11 05:00)
東京農工大学大学院工学研究院の嘉治寿彦准教授と近畿大学理工学部の田中仙君講師らは、有機物の「グアニジンヨウ化水素酸塩」を使い、人体に有害な鉛を用いずに次世代太陽電池である「ペロブスカイト太陽電池」の開発に成功した。安全で耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の実現につながる可能性がある。成果は10日、英電子版科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
研究グループは、熱安定性が高いグアニジンヨウ化水素酸塩に着目。真空蒸着により、ヨウ化スズと同水素酸塩を重ねて膜を作ると、可視光を吸収した。X線回折の結果、特徴的なペロブスカイト構造を確認した。ただ、光電変換効率は低いため、数値の向上が課題となる。
さらに同水素酸塩は熱安定性が高いため、太陽電池を作成するためにヒーターで加熱しても昇華を制御しやすいことも突き止めた。従来の材料は加熱すると昇華と同時に分解も起きてしまい、制御が難しかった。
また同水素酸塩の真空蒸着中に、ヨウ化スズの溶液も同時に蒸着する手法を試したところ、結晶粒子の大きさを制御することに成功。面積当たりの最大電流(短絡電流密度)を向上することに成功した。この手法は従来、有機半導体だけに用いられていた。
ペロブスカイト太陽電池は、灰チタン石(ペロブスカイト)と同じ結晶構造を持つ有機無機の混合材料を用いる。桐蔭横浜大学の宮坂力教授が開発した。開発コストが安価なことから世界中で研究が進んでおり、現在の変換効率は単結晶シリコン系の太陽電池に迫る20%となっている。
ただ、主原料として人体に有害な鉛や、熱分解しやすい有機物などを使うことが、実用化への課題だった。
(2017/7/11 05:00)