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[ 環境・エネルギー ]
(2017/7/19 05:00)
神戸製鋼所や早稲田大学、エネルギー総合工学研究所(東京都港区)が協力し、電力を圧縮空気として貯蔵する圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)技術の実証事業を進めている。電力に余裕がある時にコンプレッサーを運転し、空気を圧縮してタンクに貯蔵。電気が必要になったら圧縮空気で発電機のタービンを回し、電気をつくる。従来の蓄電池に比べて寿命が長いなどの利点があり、再生可能エネルギーの出力変動の影響を抑える新技術として期待される。(編集委員・宇田川智大)
【静岡で実施】
実証試験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として、静岡県河津町の山林に設置した設備で行う。町内にある東京電力ホールディングスの風力発電所から送られる電気でコンプレッサーを運転し、空気を圧縮して容積30立方メートルのタンクにためる。電気が必要になった時に圧縮空気を取り出し、外気との圧力差で発電タービンを回して電気をつくる。
空気を圧縮した際に出る熱を熱媒体に蓄えておき、放電時にタンク内の圧縮空気を加熱して膨張させ、充放電効率(充電したエネルギーに対する放電エネルギーの割合)を高める工夫もした。空気のタンクは52基あり、発電時の出力は最大1000キロワットに達する。
本格的な運用を4月に始め、2年間かけて性能を試す。(1)風力発電の出力変動(2)東電が需要予測に基づいて立てる発電計画と、実際の発電量との差異―に機敏に対応して充電や放電を行える制御技術の確立が狙いだ。
【コスト低減】
神鋼は「空圧電池」の商標でシステムの普及を目指す考えだが、課題もある。実証設備の充放電効率は最高65%程度と、リチウムイオン二次電池やナトリウム硫黄(NAS)電池が80%から90%以上なのに比べて見劣りする。設置や運用のコストも割高だ。
ただ、圧縮空気の圧力をさらに高めることで充放電効率が上がるほか、設備も小型になってコスト低減につながる可能性がある。
また、耐用年数が20年以上と、リチウムイオン二次電池の2倍程度の長さになるほか、空気を圧縮する際に出る温熱や膨張時に出る冷熱を、冷暖房や冷温水として近隣に供給するといった活用法もある。
大規模な工場などにCAESシステムを導入すれば、電力需給の変動に合わせて充電と放電を切り替え、電力コストを抑えることができる。実際に「導入を検討中の需要家がいる」(神鋼の開発担当者)という。実用化されれば、出力変動が大きな課題だった風力発電や太陽光発電の導入を促進する効果に加え、電力の大口需要家にもエネルギーコスト低減への強い味方となりそうだ。
(2017/7/19 05:00)
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