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[ エレクトロニクス ]
(2017/8/10 05:00)
NECが車載用リチウムイオン電池事業から撤退する。日産自動車と共同出資で設立した電池組み立て会社「オートモーティブエナジーサプライ」(AESC、神奈川県座間市)の身売りが決定。これに伴い、AESCに対し心臓部の電極を供給する生産子会社「NECエナジーデバイス」(相模原市中央区)についても、AESCとセットで中国のGSRグループに売却する協議に入った。ただ電極は手塩にかけて育てた虎の子の技術であり、売却の条件などの着地点は見えていない。(編集委員・斎藤実)
AESCの売却は、経営権を持つ日産が決定した。NECは従うしかない。一方のNECエナジーデバイスは日産向けの製品供給がビジネスの生命線だが、飛行ロボット(ドローン)などへの用途展開も有望視されている。
NECエナジーデバイスの本拠地である相模原市は、元々NECの半導体の生産拠点だった。その一角を全面改装し、2010年にリチウムイオン電池の電極工場を立ち上げた。量産ラインの先駆けであり、製造工程を一般公開していなかったため、全容は今もってベールに包まれている。ただ出力や安定性、電力の出入力を最適化するコントローラーの性能は折り紙付きで、そこにはNECのモノづくりのノウハウが凝縮されている。
生産ラインは印刷の輪転機に似通った構造だ。長さ50メートルの2階建てのラインが廊下を挟んで左右に配置され、それぞれマイナスの電極とプラスの電極を生産している。主要な作業は「混ぜる、塗る、乾かす、ならす」。粉体材料を液状化して混ぜ合わせ、ロールを回しながら溶剤を極板に吹き付けるように塗る。最初に表面を塗り、そのままラインの2階部分で裏面を塗って戻る仕組み。
生産ラインは乾燥機のような役割もあり、塗り付けた溶剤を熱で乾燥させ、最後にプレスして一定圧に仕上げる。1ロールは数時間で完了するが、ロット単位で一気に作るため、全作業が終えるには2日弱かかる。各工程は自動化されているが「レシピがあっても、誰でもおいしい料理ができるわけではない」(澤村治道NECエナジーデバイス社長)と話す。運営自体がノウハウの塊であり「温湿度の管理をはじめ、どれだけ緻密に管理できるかが決め手となる」(同)と胸を張る。
誤算は電気自動車(EV)の需要予測を見誤ったこと。米テスラのような高級車向けならば高値でも売れるが「大衆車向けを狙ったのが裏目だったのかも」と、澤村社長は胸中を打ち明ける。
NECエナジーデバイスの売上高は150億円、従業員は約400人。AESCとセットでの売却は、GSR側の要望が強かったとみられる。売却の条件や金額は今後調整する。交渉のデッドラインはAESCを売却する12月末までだ。有形・無形の資産をGSRがどう評価するか、今後の注目点になる。
(2017/8/10 05:00)