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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/2 05:00)
ノーベル賞の発表が2日から始まる。4年連続で日本人受賞となるか、期待は大きい。一方で、2016年に受賞した大隅良典東京工業大学栄誉教授をはじめ、日本の科学の将来に不安を訴える受賞者は多い。科学を究めた研究者の目に、日本のサイエンスはどう映っているのか―。
「受賞から16年。改革を訴えてきたが、実現率は10%」と01年に化学賞を受賞した野依良治科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター長は嘆く。15年に物理学賞を受賞した梶田隆章東京大学宇宙線研究所長も「この2年間、機会あるごとに日本の科学技術が危機的な状況にあることを説明してきたが、メッセージがどれだけ伝わったかは分からない」と本音を明かす。日本人がノーベル賞を受賞すると、一時的に日本の科学に関心が高まる。だが長くは続かない。ブームに終わらない科学技術振興策が求められる。
ノーベル賞受賞者のメッセージがダイレクトに政策に反映されるケースもある。「実用化研究」の分野だ。14年に青色発光ダイオードの開発で赤崎勇、天野浩、中村修二の3氏が物理学賞を受賞すると、科学技術政策のイノベーション志向が強まった。実用化研究で産学連携の大型化や組織化が急速に進んだ。天野名古屋大学教授は「産業界と学術界の双方で活躍する人材を育成したい」と展望する。
「実用化研究」に対し、研究者の探究心を基に進める「学術研究」は、民間資金の導入が難しい。16年に生理学医学賞を受賞した大隅東工大栄誉教授は、基礎研究や若手研究者の窮状を訴えた。その結果、いったんは基礎回帰の流れが生まれ、大学運営費交付金の削減は止まった。ただ、学術研究全体を立て直す政策は、まだ打ち出せていない。
梶田所長は「数年で終わる施策を看板を掛け替えながら続けるより、抜本的な対策が必要」と、運営費交付金の立て直しや大学院教育施策の恒久化を提案する。野依センター長は、若手を縛る大学の講座制撤廃を唱えるが「抵抗するのは教授陣。競争に勝つために研究室を大きくして従順な若手をそろえるが、科学全体の進展ではなく体制維持が目的なら本末転倒」と批判する。
15年に生理学医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授は「国立大学の先生は国に依存しがち」とクギを刺す。自身は国に頼らない研究室経営を続けてきた。「大学予算の一部を小中学校の理科教育の充実にあててもいいかもしれない」(大村教授)。小中学校で理科を好きになった子どもが、受験勉強で面白さを失っていく現実を嘆きつつも「教育ほど確実な投資はない」と強調する。
基礎と実用の双方の重要性が認識された今こそ、打てる政策がある。日本人ノーベル賞受賞者の至言が、科学の未来を喝破する。
(2017/10/2 05:00)