[ オピニオン ]
(2017/10/13 05:00)
日本整形外科学会が、運動器の障害により移動機能が低下した状態である「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群=ロコモ)対策の重要性を提唱して10月で丸10年を迎えた。ただ対策は道半ばであり、医療機器メーカーを始めとした産業界がリードし、浸透を図るべきだ。
運動器は骨や関節、靱帯(じんたい)、神経の総称で、運動器の働きにより人が自分で自由に体を動かせる。運動器の各部位は連動しており、どの部位が壊れても体はうまく動かなくなる。
運動器疾患は日本人の約3人に1人に当たる約4700万人が罹患(りかん)する“国民病”とも言える身近な疾患だ。「立つ」「歩く」という機能が低下した状態で、進行すると日常生活に支障をきたし、要介護となるリスクが高まる。
厚生労働省の調査でも、要支援・要介護になった原因は、転倒や骨折、関節・脊椎の病気と言った運動器疾患が全体の25%を占める。脳卒中などの脳血管疾患(19%)、認知症(16%)を抑え、第1位だ。
政府も社会保障負担の軽減や個人の生活の質(QOL)向上のため、日常生活に制限のない期間である健康寿命の延伸を掲げるが、ロコモは健康寿命延伸の“大敵”である。ロコモ予防に向け、運動器の健康を維持することが欠かせない。
厚労省は国民の健康増進の基本方針である「健康日本21(第二次)」で、ロコモの認知度を22年度に80%にする目標を掲げる。だが、現状は46・8%にとどまり、特にここ数年は認知度の上昇ペースが鈍化している。
70代の女性を中心とする高齢者には認知が広がっているものの、青壮年期など“ロコモ予備軍”への認知が足りない。普及啓発に向け、手軽にロコモを計測できる機器開発や予防プログラムの導入支援が不可欠だ。国民的な活動にする必要がある。
運動機能テストや実態を調査する企業のほか、高齢者を対象にロコモ健診を開く地方自治体も出始めている。ただ、対策はまだ不十分といえ、医療関係者はもちろん、関連する産業界も普及に努めてもらいたい。
(2017/10/13 05:00)
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