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[ 科学技術・大学 ]
(2017/10/27 05:00)
京都大学高等研究院物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の劉莉(りゅうり)連携准教授、大阪大学大学院医学系研究科の南一成特任准教授と澤芳樹教授らは、生体内に近い配列を持つ高純度の心筋細胞組織片を、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製することに成功した。培地として、マイクロファイバーによって細胞の配列方向をそろえた多層構造を採用。心筋梗塞などの細胞医療治療が期待でき、創薬・薬剤評価での応用も見込む。
培地の素材として、研究グループは体内で分解可能な「乳酸―グリコール酸共重合体」の糸を使用。扱いやすく安全で、弾力性と強度があり心筋細胞の培養に適している。太さと密度を検討し、直径1マイクロ―2マイクロメートル(マイクロは100万分の1)の糸を厚さ10マイクロメートルの層とした。糸に沿ってヒトiPS細胞由来の心筋細胞を培養し、厚さ数百マイクロメートルの組織片を作製できた。従来のランダム構造の課題だった収縮力を確保し、強い拍動を得た。
組織片を生体外不整脈モデルに貼り付けたところ、不整脈消失を確認できた。心筋梗塞モデルのラットでも、ラットiPS細胞由来の組織片の移植で心機能を回復した。
2枚の組織片を密着させ、より厚みのある組織の作製も可能。2018年から大型動物の試験を進め、数年後の実用化を目指す。
成果は米科学誌ステム・セル・リポーツで公開された。
(2017/10/27 05:00)