[ オピニオン ]
(2017/10/31 05:00)
地域金融機関の収益力の低さを警告する報告書を、日銀と金融庁が相次いでまとめた。金融庁は本業のもうけを示す「顧客向けサービス業務」の利益が想定を超えるペースで減少していると指摘する。顧客起点に立った収益改善を急ぐべきだ。
日銀の調査によると、日本の地域金融機関の1店舗当たりの業務粗利益は欧米の金融機関に比べて低い。資金利益、非資金利益とも欧米より低く、収益源の多様性でも劣るという。
一因は欧米と比べて圧倒的に店舗数が多いためだ。貸出金利面で金融機関同士の競争が激化し、収益性が低下している。
改善策として、サービスの差別化や収益の多様化、設備と従業員の適正配置による労働生産性の向上、他の金融機関との合併・統合や提携を挙げる。いずれの策を進めるにしろ、顧客起点に立った姿勢が欠かせない。
それを考えるに当たって、地域銀行をメーンバンクとする企業に聞いた金融庁のアンケートは示唆に富む。過去4年間の貸出金利回りの低下幅が小さい銀行の方が、低下幅が大きい銀行より、「経営上の課題や悩みの把握」「提供するサービスの効果」の双方で顧客企業の満足度が高いという。
利回り低下の圧力がかかる中で、過当競争に巻き込まれず、顧客企業の事業への理解や信頼関係を深める銀行が評価され、収益を確保している。
一方で「メーンバンクの訪問があまりない」と答えた割合は「正常先上位」企業で9%だったのに対し、「要注意先以下」は29%に上る。銀行は格付けが低い企業への取り組みが不十分と指摘している。
超低金利の長期化に伴い、本業での収益確保が難しく、ハイリスクな有価証券運用や不動産融資などで短期的な収益を確保する動きも広がっている。だが、その場しのぎの改善策では持続的な経営は望めない。
地域金融機関の健全性は今のところ問題ないと両報告書は指摘する。顧客との信頼関係の構築には時間とコストがかかる。余力のある今こそ、顧客企業に向き合う姿勢が求められる。
(2017/10/31 05:00)
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