[ オピニオン ]
(2017/11/9 05:00)
位置情報をセンチメートル級で正確に測定できる準天頂衛星「みちびき」のデータが、2018年度にも民間に無償提供される。飛行ロボット(ドローン)や自動走行トラクターを利用する“スマート農業”の普及に向けて、農林水産省には利用を後押しする政策を望みたい。
みちびきは米国の全地球測位システム(GPS)を補完し、従来はメートル級だった誤差を大幅に高精度化する。10月に4機目が打ち上げられ、“日本版GPS体制”に一応のめどが立った。
農業では水稲にしても野菜にしても、畝に沿って整然と植えるのが普通。自動走行のラインが数十センチメートルずれただけでも、薬剤を同じ畝に2度まいたり、必要な畝に1度も散布されなかったりといった問題が生じる。
農業用機械でも自動走行の実験は始まっている。ただスマート農業で農薬や肥料代を節約するつもりが、逆効果になる可能性もあるわけだ。住宅地に近い農地では、ドローンのまく農薬が風で流れるなどの問題もある。スマート農業の有用性は理解しても、実施には困難が伴うのが現実だった。
人工衛星による高精度位置情報の提供は、こうしたネックを一変する可能性がある。トラクターが隣の畝に入り込んだり、ドローンが狙った場所と違う場所に薬剤をまいてしまったりするミスが防げるからだ。
すでにドローンを作物の上空30センチメートルで低空飛行させ、1株ごとの生育状況をリアルタイムで監視する運航会社もある。衛星を活用し、このキャベツには肥料をやり、こちらのキャベツは生育十分だから見送るという具合に精密栽培の可能性がある。
気象データで雨雲や気温などの位置情報と組み合わせれば、さらに可能性が広がるだろう。植物工場と同じような収穫時期調整が、露地栽培でも実現できるからだ。品質管理やコストダウンにも大きな利点となる。
農業は少子・高齢化で担い手が不足しているといわれる。人工衛星を利用したスマート農業がその解決策の一つになるかもしれない。
(2017/11/9 05:00)
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