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[ 科学技術・大学 ]
(2017/12/4 05:00)
東京医科歯科大学の松元亮准教授、名古屋大学の菅波孝祥教授らは、機械とたんぱく質を使わないカテーテルだけの人工すい臓を開発した。糖尿病モデルのネズミの実験で効果を実証した。従来のインスリンポンプのようなセンサーのメンテナンスが必要ない、安価で丈夫な人工すい臓として利用が期待される。成果は米科学誌サイエンス・アドバンシーズに掲載された。
既存のインスリンポンプは、腹部から体内にカテーテルと呼ばれる細い管を通してインスリンを放出し、血糖センサーを搭載した機械で調整する。センサーは定期的な精度管理が必要な上、針などの消耗品が月に3万円程度かかるなど経済的にも負担があった。
開発した人工すい臓はセンサーが不要で、カテーテルのみ体内に埋め込んで使う。インスリンを放出する直径1・2ミリメートルのカテーテルには小さな穴があいていて、血液中のグルコースと可逆的に結合するゲルが詰まっている。血液中のグルコース量が正常なときは、ゲル表面がプラスチックの皮のようなものが張った状態だが、グルコースが増えてゲルの成分と結合すると、ゲルの水分量が変わって軟らかくなってインスリンが放出される仕組みだ。
1型糖尿病モデルのマウスを使った実験では、10日間皮下にデバイスを留置したところ、糖尿病の指標となる「HbA1c」が低下していた。松元准教授は、「現在は中・大動物を使った実験に移っている。4―5年をめどに、ヒトへの使用を目指したい」と話す。
(2017/12/4 05:00)