[ オピニオン ]
(2017/12/14 05:00)
景気回復が長期化し、企業収益も好調だが、企業の景況感はいまひとつ盛り上がりに欠ける。その背景にあるものは何か。それらが解決しないことには今後も景況感の大幅な改善は望めないのだろうか。
日銀は15日に12月調査の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表する。円安、株高に加え、輸出や生産の伸びが順調で、2017年度中間決算が好調だったにもかかわらず、代表的な指標である大企業製造業の業況判断DIに関しては、民間調査機関の多くが小幅改善の予想にとどまっている。
人手不足感の拡大による人件費の増加、一部の大手メーカーによる不正検査やデータ捏造(ねつぞう)など品質管理問題に伴う悪影響が景況感を押し下げることにつながったものとみられる。さらに先行きの予想は慎重化するとの見方が大勢を占める。
企業を先行き不安にしている要因はいくつかある。米国と北朝鮮の関係は緊張度を高めており、軍事衝突の可能性を危惧する向きもある。さらにトランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と認定したため、アラブ諸国やイスラム圏が反発、抗議行動を繰り返している。いずれも堅調な世界経済を揺るがすリスク要因とあって、企業にとって懸念材料になる。
こうした海外要因に対して、政府ができることは限定的だ。従来の外交政策を堅持し、平和的解決を求めていくとともに、米国、北朝鮮、アラブ諸国の動向を静観する以外に道はない。
ただ、国内では課題が山積している。とりわけ好調な企業収益をいかにして家計に波及させ、個人消費を増大させて経済の好循環を確立するかが急務となっている。政府はこのほどまとめた経済パッケージの根幹をなす「生産性革命」によって、企業の弱みである潜在成長率の底上げを図り、企業が賃上げや設備投資を進めやすい環境を作り上げなければならない。
企業は賃上げに加え、人材育成を進めて人手不足を解消し、成長力の向上に努めてほしい。そうすれば、将来不安は薄れ、景況感も上向くに違いない。
(2017/12/14 05:00)