[ オピニオン ]
(2017/12/27 05:00)
東京工業大学に関係する研究開発型ベンチャー企業を中心に投資・経営支援するベンチャーキャピタル(VC)、みらい創造機構(東京都千代田区)が1号ファンドの組成を完了した。公的資金に頼らず、デンソーなど大手製造業も出資するファンドで、既存の大学関連VCにはない活動を期待したい。
みらい創造機構は東京工業大学の卒業生らが設立。アステラス製薬、デンソーなどベンチャー企業投資に積極的でなかった事業会社のほか、みずほ証券系投資会社、三菱UFJキャピタル、東京都民銀行、西武信用金庫など13社の出資で総額約33億円の資金を調達した。
東京大学や京都大学など公的資金でファンドを組成した大学に比べて、投資の自由度が高いという。これまでに、ビッグデータ解析や半導体、センサー、医療技術、オンライン教育などを手がけるベンチャー企業8社に投資した。
出資した事業会社は、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)など社会を変える技術の台頭に直面し、1企業では未来社会を描けないとの危機意識を持つ。モノづくりに情熱を持つ東工大と新たなオープンイノベーションを手がけたいという思いが強い。
機構に社員を送り込むデンソーの山中康司副社長は「大学内に根を張りシーズを目にすることで、どのような連携ができるか明確になる」と強調する。東急不動産ホールディングスの西川弘典取締役も「今は本業と直接、関わる案件はないが、議論の中で異分野の共同事業が生まれてくるはずだ」と期待する。
東工大は従来、高い技術力を持ちながら、東大など他の研究型大学に比べてベンチャー企業を育成する活動が遅れていた。文系学部や医学部などを置かないため、文理融合研究なども進まないと指摘されていた。
機構はこうした弱点を補うことになる。投資経験のある経営陣が、出資企業を始めとした民間会社や他の大学・研究機関とのつなぎ役となり、新たな産学連携モデルを確立することを期待したい。
(2017/12/27 05:00)
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