[ オピニオン ]
(2018/1/1 05:00)
デジタル化、グローバル化が進む中で、日本のモノづくりの復権には何が必要か。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)を取り込むことは重要だが、事業を再定義し、新たな価値と市場を創造することが不可欠だろう。
昨年は自動車業界で無資格検査、素材業界で検査データの改ざんなど不祥事が相次いだ。いずれも品質保証に関わるだけに、モノづくりの根幹を揺るがす出来事である。
日本製品の品質は世界最高―。1990年代までは確かにそう評価された。過去の成功体験にとらわれ、「過剰品質だから」という“おごり”が不祥事の根底にあるのではないか。
長年染みついた“澱(おり)”を取り除き、この問題を解決することは急務だ。ただより深刻なのは、日本企業が低価格で高品質な製品づくりに終始し、新たな価値を創造することを怠ってきたのではないかという点だ。
新興国の台頭により、2000年代から電機業界の一部は国際競争力を失い、事業の再定義に迫られた。デジタル化による写真フィルムの消滅を予想し、いち早く医療機器や医薬事業にかじを切った富士フイルムのような成功事例もある。
ガソリン車などの規制を受け、自動車業界も事業を再定義し、電気自動車(EV)をはじめとした電動化にシフトチェンジする。電機業界で起こったハードウエアの汎用化などにどう対処するかが注目されよう。
米アップルのスマートフォン「アイフォーン」は、スティーブ・ジョブズ氏の「電話を再定義する」というビジョンのもと、音楽や動画を配信する新たな市場を切り開いた。米国のアマゾンやグーグルなども、既存の業界秩序を破壊するような価値を提案している。
AIやIoT、ビッグデータ解析などは、あくまでも生産性を飛躍的に高め、顧客ニーズを製品づくりに反映させるための手段だ。それだけで優れた製品や事業は生まれない。顧客に対して新たな価値・ビジョンを示す製品や事業を生み出すことが、復権の鍵となるだろう。
(2018/1/1 05:00)
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