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[ 科学技術・大学 ]
(2018/1/8 05:00)
日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センターの熊谷友多研究員らは、東京電力福島第一原子力発電所で核燃料が原子炉材料などとともに溶け落ちた「燃料デブリ」が、正常な核燃料より、水に溶けにくく化学的に安定していることを実験で確認した。燃料デブリにジルコニウムが混じっている場合、冷却水の汚染リスクを低減できる可能性があるという。
原子炉で使用された核燃料は、強い放射線を発し、冷却水を分解して過酸化水素を発生する。この過酸化水素と核燃料が反応すると、ウランが溶け出す。すると、核燃料に含まれる他の放射性物質も溶け出しやすくなり、冷却水が汚染される。
だが、燃料デブリのように不純物を含む核燃料が、どのような化学特性を持つかは分かっていなかった。
研究グループは、核燃料の被覆材の主成分で、燃料デブリに多く含まれるとみられるジルコニウムを含む模擬デブリ試料を作製し、ウラン溶出量と過酸化水素量を測定した。
その結果、ジルコニウムを50%含む場合、2時間後のウラン溶出量は、正常な核燃料の約4%と少なかった。これは、ジルコニウムが、溶出の原因物質である過酸化水素の分解を促進するためと考えられる。
福島第一原発の燃料デブリは、ジルコニウムのほかに、原子炉構造材の鉄、ステンレス鋼や制御用材料の炭化ホウ素などが混ざっているとみられる。
今後、これらの影響についても評価し、廃炉工程の検討に生かす。
(2018/1/8 05:00)