[ オピニオン ]
(2018/1/10 05:00)
日立製作所の中西宏明会長は産業界にとって理想的なリーダーだ。日立を立て直した手腕を日本経済の再興にも発揮してもらいたい。
中西氏は早い時期から経団連の次期会長候補として独走状態にあった。18人いる副会長の筆頭でもあり、政府の「未来投資会議」の議員を務めるなど安倍晋三政権と太いパイプを持つ。榊原定征会長(東レ相談役)にとって理想的な後継者といえるだろう。
正式就任すれば、エレクトロニクス業界出身の経団連会長としてはキヤノン会長の御手洗冨士夫氏以来8年ぶりとなる。御手洗氏以降もパナソニックの中村邦夫会長(当時)や日立の川村隆会長(同)らが有力視されたが、いずれも固辞したとされる。ひとつの理由は、財界のかじ取りが以前に比べて格段に難しくなっていることにある。
製造業が主導する経団連が「時代遅れだ」という批判は根強いが、それは経済の実態を知らない意見でしかない。確かに雇用や国内総生産の創出の面では第2次産業より第3次産業の果たしている役割の方が大きい。しかし、そうした経済活動の源泉となる外貨を稼ぐ能力は製造業が他を圧している。
他方、新興国企業の追い上げの中で日本の製造業がかつてほどの国際競争力を持てなくなっているのも事実だ。いくつもの産業界のリーダー企業が、巨額の赤字決算を経験した。また近年、相次いで明らかになっている品質問題の背景にも収益力の低下がある。
産業界が再び力強さを取り戻すためには、製造業がイノベーションによって装いを改めるしかない。過去最悪の赤字に沈んだ後、積極的な事業構造改革で収益力を高めている日立は、その模範となる企業だ。
中西氏は財界活動の中でも、社会全体のイノベーションのビジョンとして「ソサエティー5・0」を提唱してきた。製造業だけでなく、第3次産業を巻き込んだ産業社会の目指すべき姿を示すものだ。財界のトップに就き、ビジョンの実現に力を尽くすことを望む。
(2018/1/10 05:00)
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