[ オピニオン ]
(2018/1/11 05:00)
野菜を中心に農産物が高騰している。天候不順や輸入コスト増などが主要因だが、見栄えや製造年月日を気にする消費者の“過剰品質志向”も無視できない。行政や小売り業界、食品メーカーなどが一体となり、消費者の意識改革に向けた取り組みが必要だ。
スーパーなどの店頭で売られている野菜や果物は、形がまっすぐで大きさや色つやもそろったものがほとんど。海外でこうした例は少なく、1個単位や100グラム当たり幾らなどと量り売りする方が多い。
曲がったキュウリや輸送途中で傷が付いたリンゴなどは、消費者は受け付けない。大手スーパーやネット通販では「訳あり農産物」として販売する例もあるが、構成比はごくわずか。カット野菜や外食、ジュースなどには十分使えるはずだが、多くは規格品外で捨てられている。
工業製品とは違い、農産物は決まったサイズや形、色つやを生産することが難しい。栽培管理技術で実現している例もあるが、相応のコストがかかる。贈答用のミカンやイチゴが家庭用の商品より値段が高いのは、こうした理由からだ。
消費者の過剰品質志向は、選別のための機械化や人件費アップだけでなく、生産・流通段階での廃棄品の大量発生につながり、高価格化を招く。一方で農業生産者からは「野菜などは手間がかかる割にもうからない」との声が多く聞かれる。
消費者、生産者双方の誤解や被害者意識を解くカギになるのが、情報通信技術の発達である。訳あり野菜や産地直送品の購入がさらに便利になれば、食材ロスの削減やミスマッチ解消にも結びつく。
政府の“脱デフレ”のかけ声とは裏腹に、消費マインドはなかなか好転しない。その一つの要因が農産物や食品価格の引き上げで、これが衣料品や耐久消費財などの買い控えにつながっているといった指摘もある。
贈答用はともかく、家庭用でそこまでサイズや形を気にする必要があるのか。行政や小売りなどが一体となったPR活動が重要になるだろう。
(2018/1/11 05:00)