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[ 科学技術・大学 ]
(2018/1/17 05:00)
東京電力は、福島第一原子力発電所2号機の格納容器の内部調査を19日にも始める。2号機は2017年にサソリ型ロボを投入したものの、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)は確認できなかった。一連の調査で活躍した「さお付カメラ」を高度化し、新たに「釣りざお型ロボ」として燃料デブリなどの撮影に再挑戦する。成功すればデブリの溶け広がり具合を推定でき、デブリの取り出し工法を決める際の重要な知見が得られる。(小寺貴之)
【さお型を改良】
「まだ山を登り始めてもいない。山の麓で山頂の高さや頂上へのルートを探っている段階」と東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは廃炉作業の困難さを説明する。11年の東日本大震災から7年がたとうとしているが、廃炉の要であるデブリの取り出しは緒に就いてもいない。
17年の2号機の調査ではサソリ型ロボが堆積物に足を取られてしまい、すぐに進めなくなってしまった。そこでサソリ型ロボの監視用に投入したさお付きカメラを伸ばすことで、圧力容器を支える円筒状の構造物(ペデスタル)の内部をのぞき込むことができた。自走式のロボットよりも、単純なさおの方が活躍した格好だ。
19日にも始める調査では先端からカメラをつり下げる機構を追加、デブリが溶け落ちたペデスタル地下階にカメラを降ろす。ペデスタルの端から端まで見えるカメラを搭載したため、損傷具合の全容と、堆積物やデブリの広がりを観察できると期待される。
注目されるのがペデスタル地下階に開いた「アクセス開口部」の様子だ。開口部からデブリが外へ漏れ出ていれば、圧力容器の上からデブリを取り出せず、格納容器に横から穴を開ける必要が出てくる。漏出がなく上から取り出せれば、作業中に放射性物質を封じ込めやすくなる。取り出し工法を左右する重要なポイントだ。
【構造物が課題】
ただ調査は難航が予想される。開口部はカメラ投入地点の反対側にあり、地下階はデブリの熱で湯気がたちこめ、損壊した構造物が落下しているとみられる。湯気は画像処理で消去できるが、構造物で視界が遮られる恐れもある。
増田プレジデントは、「開口部が見える視認距離のカメラを新たに選んだ。(直接目視できなくても)損壊が対称に広がっていれば、状況を推定できる」と期待する。
今回の投入にあたり、東芝と国際廃炉研究開発機構(IRID)は装置を一から設計し直した。釣りざお型ロボはさおの重さを除いても、16メートル先に2キログラムの調査ユニットをぶら下げるため、全体が限界までしなる。
【到達距離を伸張】
カメラをつり下げるケーブルの中だるみを防ぐために、釣さおの根元と先端にケーブル送り機能を持たせ、その上で先端重量を削減して到達距離を約1・3メートル伸ばした。
開発した東芝エネルギーシステムズの安田年廣担当部長は、「情報がとれるかどうか期待もプレッシャーも大きい」と話す。デブリ取り出しに向けて登山口から一歩踏み出せるのか注目される。
(2018/1/17 05:00)
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