[ 金融・商況 ]
(2018/4/9 20:30)
新たな任期が9日から始まった日本銀行の黒田東彦総裁は同日夜の記者会見で、現在の長短金利操作付き量的・質的金融緩和を2%の物価安定目標の達成が「はっきりするまで続けていく」と述べ、早急な政策転換を否定した。
黒田総裁は2%目標には距離があり、金融緩和からの出口戦略の議論は「まだまだ時期尚早」とした上で、性急に行った場合は金融システムに影響が出る可能性があるとの見方を示した。将来の政策余地を拡大するために、緩和を縮小するのは適切ではないとも説明。米の出口戦略が当初の予定から異なっていることを挙げ、早急な説明は「かえってミスリーディング」だと述べた。
ただ出口の際は、市場の安定を確保し適切な政策を行うのは可能だと表明した。時期が来れば、市場とも「適切に対話する」という。具体的な手段や順序は「状況によって変わる」としたものの、「金利とバランスシートの扱いが課題」だと指摘。長期金利が大きく変動しないよう「慎重に緩やかに行う」と話した。
黒田総裁の任期は5年。後ずれする2%物価目標を達成し、異次元緩和の出口を迎えることが課題だ。出口時の利上げに伴い、巨額の長期国債を保有する日銀が赤字となる可能性があるほか、低金利で国債発行する政府との摩擦も想定される。26、27両日の金融政策決定会合は雨宮正佳、若田部昌澄両副総裁が加わった新布陣で臨む。
黒田総裁は再任について「非常にやりがいがある」と表明。現在73歳だが、任期いっぱい務めるつもりだと述べるとともに、「正常化プロセスもいずれ検討しなければならない」との考えを示した。過去5年の任期については「目標は間違っておらず、金融政策も適切だった」と振り返った。
共同声明を堅持
会見に先立ち、安倍晋三首相や麻生太郎財務相、茂木敏充経済再生担当相らと官邸で会談した黒田総裁は終了後、記者団の取材に「政府との共同声明を堅持し、物価安定目標の実現を目指す」と説明した。政策運営については「強力な金融緩和を粘り強く続ける」とした上で、「毎回の金融政策決定会合で、経済、物価情勢や金融市場を勘案し、適切に決定する」と述べた。
安倍首相からは「物価目標実現に向けかじ取りしてほしい」との指示があったという。共同通信によると、安倍首相は黒田総裁との会談で、来年の消費税増税に向け政府と日銀が協調して 「経済を力強く成長させていきたい」と語った。
麻生財務相は記者団に「来年10月の消費税引き上げが可能な経済状況を作り上げねばならない」と述べた。茂木経済再生担当相は「人づくり革命、生産性革命に引き続き全力で取り組む」と表明した。
黒田氏は2013年3月に就任し、2年で2%の物価目標実現へ向け、大規模な国債買い入れを柱とする異次元緩和を開始した。マイナス金利や長短金利操作も導入したが、原油価格下落や消費増税を受けて物価は低迷。達成時期は6回も先送りされ、2月の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比1%上昇にとどまる。(ブルームバーグ)
(2018/4/9 20:30)