(2018/5/22 09:30)
経済産業省が2017 年春から提唱している第4次産業革命に向けた戦略「コネクテッド・インダストリーズ(CI)」。モノづくりやサービス産業などあらゆる領域でデータ利活用を促進し、新たな付加価値を生み出す試みだ。17年度補正予算から、データ利活用を促すCIの具体的な施策が動きだす。こうした諸施策の主要なユーザーと目されているのが、全国各地で活躍するモノづくりの中小企業だ。
「第4次産業革命の恩恵は、製造業のほか農業、サービス業、建設業などを支える中小企業が被るべきだ」──。CI「大臣懇談会」メンバーで経産省の各種施策に影響力を持つ冨山和彦経営共創基盤社長は、CI の主役に中小企業を推す。第4次産業革命がもたらす破壊的変化により、「企業は雇用の規模ではなく、1 人当たりの生産性を誇る時代になる」からだ。
事実、経産省が17 年度補正予算や18 年度予算案などで打ち出したCI関連の施策では、中小企業向けの取組みがめじろ押しだ。代表例が補正予算額1,000 億円を計上したものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業(ものづくり補助金)。今回から企業間でデータを共有し付加価値を生むプロジェクトを補助対象に追加。複数の中小企業で構成する共同体などを積極的に支援する方針だ。
このほか、18年度創設予定の「CI税制」も中小企業による利用が期待される。事業者の革新的なデータ利活用計画を主務大臣が認定し、センサやロボットなどIoT(モノのインターネット)関連の設備投資を伴う場合は、減税措置を講じる仕組み。中小企業をはじめとする産業界の生産性を底上げし、国内経済の成長力を高めることが狙いだ。
補正予算や税以外では、国が全国各地の支援機関と連動する「スマートものづくり応援隊」事業も重点施策の1つだ。各支援機関にIoTやロボットの導入に関する相談窓口を設け、地域企業の次世代化を後押ししている。現在、連携機関数は約20件。17年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では2年以内に40件に増やす目標が掲げられており、支援の輪のさらなる拡大が期待される。
(日刊工業新聞 編集局経済部 藤崎 竜介)
(2018/5/22 09:30)