[ オピニオン ]
(2018/5/11 05:00)
購入によって再生可能エネルギーを使ったと主張できる「非化石証書」の取引が始まる。再生エネを調達しやすくなり企業には魅力的なはずだが、仕組みが複雑でメリットが伝わっていないようだ。取引制度を創設した政府には、電気を使う需要家に向けた訴求が求められる。
再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)で認定された再生エネ発電所が生み出した環境価値が非化石証書となる。政府は再生エネ電気から「二酸化炭素(CO2)排出ゼロ」などの価値を切り離して証書化し、電力会社に売り出す。初回入札が14日から始まる。
電力会社は通常の電気と証書を組み合わせた電力メニューを販売できる。企業など電気の需要家は、電力メニューの購入で再生エネを間接的に使える。
現状、FITの電気を調達しても再生エネ価値は入手できない。FITは需要家から電気代と徴収する賦課金で成り立ち、価値は需要家が持つためだ。
FITを使わなければ再生エネ価値を入手できるが、限度がある。工場屋根に自家発電用太陽光パネルを設置しても、操業電気を賄える発電量はない。売電収入もなく、高コストだ。
その点、非化石証書は大量に発行される。証書の電力メニューは通常の電気代と比べ大幅に高くはならない。海外から遅れている日本企業の再生エネ利用が進みやすくなる。
ただ注意が必要だ。国への温室効果ガス排出量の報告では、証書分を排出ゼロとして計算できない。また太陽光や風力といった再生エネの種類や発電所を選んだ証書の購入もできない。
そもそも証書を入手できるのは電力会社だけ。企業からは「再生エネを直接使っていないのに、証書分を再生エネ利用として社外発信して良いのか」と心配する声も聞かれる。
政府には証書の売却収入で賦課金負担を軽くする狙いがある。ただ、売れ残れば無償で電力会社に分配されるため負担軽減にはならない。取引を活発にするため、電気を使う企業の要望を聞き、必要なら修正して証書の魅力を高めてほしい。
(2018/5/11 05:00)
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