[ オピニオン ]
(2018/5/22 05:00)
外国人だけでなく日本人からも1回の出国につき1人1000円を徴収する「国際観光旅客税(出国税)法」が成立した。2019年1月7日から適用される。税収は「観光立国」の実現に向けた施策に使われる。2歳以上の日本人から幅広く徴収するだけに、日本人が納得できる使い道にすることが求められる。
出国税は航空機や旅客船の運賃に上乗せして徴収する恒久的な新税だ。米国やカナダをはじめ、英国、ドイツ、フランス、中国などはすでに導入し、グローバルでみれば、それほど珍しくはない。旅行費用の負担が増えるため、訪日客の拡大に水を差すとの指摘もあるが、大きな影響は考えにくい。
政府は東京五輪・パラリンピックを開く20年に訪日客数を4000万人(17年は2869万人)に増やす目標を掲げる。これに対し、17年の日本人の出国者数は1789万人。訪日客数が日本人出国者数を上回るが、これが日本人の意向を無視して良い理由にはならない。日本人にも税金を支払うだけの恩恵を受けられるようにすべきだ。
税収は18年度(19年1―3月)に60億円、19年度以降は430億円が見込まれている。その財源は「快適な旅行環境の整備」をはじめ、「日本の多様な魅力に関する情報発信強化」「地域固有の文化・自然などを活用した観光資源の整備」の3分野に充てる。しかし、具体的な使い道は必ずしも明確ではない。
財源の使途をめぐっては、20年の東京五輪・パラリンピックのための観光設備整備など、目先のことが注目されがちだ。ただ、出国税は今後ずっと課せられる。短期的なことだけでなく、10年先20年先も視野に入れた中長期的な計画も必要だ。そうすることなしに、老朽化した設備の更新などの名目で、さらに増税が必要と言われても困る。
地方空港や港湾、入国管理官などの設備や人員の不足が問題になっているなど、さまざまな要望があがっている。日本人にとって実効ある事業を進めることが、外国人にとっても魅力的な日本になるはずだ。
(2018/5/22 05:00)
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