[ オピニオン ]
(2018/7/6 05:00)
是枝裕和監督の映画『万引き家族』が、カンヌ国際映画祭で最高のパルムドールを受賞した。21年ぶりの華々しい成果に日本中が沸いた。ただ、邦画界の先行きが安泰かというと、そうでもないようだ。
課題の一つは資金調達。予算をかけない小規模な映画か、万人受けでヒットを狙う「安定志向」の映画の二極化が進んでいるという。ガラパゴス化や人材育成も課題だ。是枝監督はインタビューなどで、資金調達や若手育成のあり方に危機感を示している。
「これからは余白や遊びの部分がより重要だ」―。先日話したとある企業幹部からの力強い言葉。今後のグローバル競争では、柔軟な発想や挑戦がより重要との趣旨だ。大いに賛同した。その直後「とはいえ、実際はリスク回避を重視してしまい、なかなか踏み切れない」とぽろり。
バブル崩壊以降、企業はリスクを避け、挑戦よりも引き締め策を進めてきた。邦画界の状況と通じる発言に、日本は今もそのマインドから抜け出せていないのでは、と感じる。
産業構造が複雑になっている時代、10年先に花開く事業のタネを仕込むには創造性が不可欠だ。そろそろ上手なリスクの取り方を見つけて、遊び心を育み発揮させることも必要だろう。
(2018/7/6 05:00)