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もしもに備えて対策を 雷害防止技術

(2018/7/25 05:00)

業界展望台

通信機器をはじめとする多数の電子機器に支えられている高度情報化社会において、安定した電気供給は必要不可欠だ。しかし落雷によって雷サージと呼ばれる異常な高電圧が発生することがあり、しばしば機器の故障や火災といった重大な被害をもたらしている。企業活動への悪影響を防止するため、落雷被害(雷害)を防止する技術を各社が提供しており、導入が求められる。1年間のうち、7~8月は落雷が最も多発する時期。雷害の仕組みや対策方法についてまとめた。

■直撃雷から守る

積乱雲などの雲中では氷の粒子が対流により摩擦を起こして静電気が発生している。たまり続けた電気が空気中に留まれずに地上・水上の物体を電極として放電する自然現象が落雷だ。雷が持つ電圧は1億ボルト以上にもなり、落雷地点やその周辺に甚大な被害をもたらす。人体に落雷した場合の死亡率は高く、一命をとりとめても失明やまひなどの後遺症を負うケースが多い。それほど非常に大きな電圧が一度に放電される。

  • 夏と冬の対地放電(落雷)検知分布

雷は主に夏と冬に発生し、発生地域や性質はそれぞれ異なる。夏季雷は地上で温められた空気が上空へ移動することで発生する積乱雲によるもの。日本で発生する雷の大部分を占め、気象庁の雷監視システムでは関東、中部、近畿地方など広い範囲で検知されている。

冬季雷はシベリア高気圧からの冷たい季節風と、対馬暖流からの水蒸気によって、主に日本海沿岸地域で発生する。回数自体は夏季雷に比べて少ないが、高い構造物に集中的に落雷し、1回の放電電圧が非常に高いといった特徴がある。多発地域ではこれらの特徴を考慮して落雷に備えたい。

被害を受けるのは建物や人体に雷が落ちた場合だけではない。雷撃には直撃雷や誘導雷などの種類があり、両方に対して対策が必要だ。直撃雷とは雨雲と大地間の放電による落雷を指し、一般的に想像されるような構造物に直接雷が落ちる現象だ。建物の損傷や火災の原因となり、雷サージを発生させることもある。被害を防ぐ方法として外部雷保護システム(外部LPS)が挙げられ、(1)受雷部システム(2)引き下げ導線システム(3)接地システム―の三要素で構成される。

受雷部システムは雷撃を受けるための部分で、主な構成要素は避雷針だ。避雷針は落雷を誘導し、建物の代わりに雷撃を受ける役目がある。避雷針で受けた雷電流を接地システムに流すのが引き下げ導線システムで、接地システムでは地中に埋め込んだ接地電極により、雷電流を大地に拡散させる。これらのシステムにより、建物自体への雷撃を回避した上で、雷電流を安全に大地に逃がすことができる。

建築基準法では、20メートルを超える建築物には避雷針を取り付ける義務が定められている。20メートル以下の建物でも落雷の可能性はあるため、自主的な設置が推奨される。また危険物を取り扱う製造所などでは、消防法などで建物の高さ制限なく避雷針の取り付けが義務付けられている。

■電子機器を守る

電子機器の雷害対策において特に警戒しなくてはならないのが誘導雷だ。誘導雷は建物や樹木への直撃雷があった際、電磁誘導により付近の通信線や電線などに異常な電流が発生し、建物内部に侵入する現象。この異常電流は誘導雷サージと呼ばれ、通信機器・設備の破損や誤作動、劣化などの原因となる。直撃雷に比べて遭遇頻度は圧倒的に多く、建物付近の落雷に限らず、遠方での落雷でも影響を受ける恐れがある。最も単純な対策方法はコンセントを抜くことだが、多くの電子機器を取り扱うオフィスや工場などでは現実的とは言えない。

  • 直撃雷と誘導雷の違い

雷サージへの対策は避雷器(サージ保護デバイス=SPD)などによって行われる。SPDとは雷による過電圧を抑制して電子機器を保護する機器だ。保護したい機器や電源上に設置し、許容量以上の異常電圧を検知すると、接地線から外へ電流を流す。想定する雷撃や接続回路、機能などによりさまざまなクラス、種類があり、雷サージの侵入経路ごとに適切に導入する必要がある。

雷の発生そのものを防ぐ手段は現時点で確立しておらず、自衛により被害を軽減することが必要不可欠だ。ここで挙げた現象以外にも、瞬時電圧低下(瞬低)やそれに伴う停電なども発生するため、併せて対策したい。

(2018/7/25 05:00)

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