[ オピニオン ]
(2018/8/20 05:00)
政府は世間を騒がせている問題に引きずられることなく、冷静な判断で科学技術振興のための予算を充実させていく必要がある。
文部科学省の幹部2人が汚職事件に関与したとして、立て続けに逮捕・起訴された。事務方トップの事務次官も、東京地検特捜部から任意で事情を聴かれていたという。2人に共通するのはともに旧科学技術庁出身で、旧文部省との統合後に官房総務課長などの要職を歴任したキャリア官僚という点だ。
事件の真相は司法の場で明らかになる見込みだが、このような問題が浮上したことで憂慮されるのは、科学技術関連の政策に与える影響だ。政府部内では先ごろまとまった2019年度予算の概算要求基準に基づく要求づくりの作業が、これからヤマ場に入る。一連の事件は旧科技庁系の部局にとって、予算編成をめぐる文科省内の調整や、財務省との折衝で不利に働く可能性があり、結果として政府全体の科学技術振興費の縮小につながる事態が懸念される。
不祥事が事実だとすれば、文科省は再発防止に向け襟を正さなければならないが、綱紀粛正と予算配分は別問題だ。持続的な経済成長と国民生活向上に向け、日本の科学技術力、産業競争力の強化に資する施策に、予算を重点配分する必要がある。
中国政府や韓国政府の研究開発投資が急速に増える傍らで、日本政府の研究開発投資は何年間も横ばいで推移してきた。この間、日本の論文数は減少傾向をたどり、各国の研究が世界でどれだけ注目されているかを示す被引用件数でも、世界ランキング上位からの後退が著しい。英教育専門誌が17年9月に発表した世界大学ランキングの最新版では、日本の大学で最上位の東京大学が前年の39位から46位に落ち、過去最低順位となった。少子化に伴う若手研究人材の先細りも懸念される中で、日本の科学技術力をどう維持・向上させるかは国民的課題だ。
政府はこうした実態を踏まえ、科学技術関連予算のあり方を、大局的な見地から検討する必要がある。
(2018/8/20 05:00)
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