[ オピニオン ]
(2018/8/31 05:00)
企業がカジノを運営できるようにする統合型リゾート(IR)実施法が成立し、候補地に名乗りを上げている大阪の動きが活発化してきた。経済界や大阪市とともに誘致に力を入れる大阪府はIR実施法成立を受け、7月25日までにIR事業者に対する指針を改定。より厳格化した。大阪は官民が協力し、中小企業やベンチャー育成に力を注ぐ。IR誘致を観光需要の拡大にとどめず、新たな産業振興の道を開く契機にしてほしい。
府の試算によると、IRは2030年までの開発を想定し、経済効果は最大1兆3300億円。事業運営は年間6300億円の経済効果を見込む。
IR実施法は、IRを誘致できるのは全国に3カ所と定める。名乗りを上げているのは大阪のほか北海道、東京、横浜、長崎といった名だたる都市や観光地。大手調査機関によると、IR3カ所の開発に関わる経済効果は最大5兆円超。大阪は全体の3割弱の効果が期待できる。
事業のノウハウを持つのは海外のIR事業者。大阪への誘致実現が有望と見て、地域活動へ参加したり報道陣と懇談したりするなど、存在感を示そうと攻勢を仕掛ける。ただIR事業者は、府と市が交通インフラ整備費の一部負担を求めているなど、課題もある。
参入を目指すIR大手、米ラスベガス・サンズ開発担当のジョージ・タナシェヴィッチ氏はインフラ整備費負担を「IRに影響し魅力が下がる」とけん制する。とはいえ大阪は訪日外国人旅行者が多く、IR事業者にとって魅力的な地域。
松井一郎大阪府知事は、府が想定する24年に開業するため「19年の今頃(夏)に事業者を決めたい」考え。IRは人、モノ、資金が動くだけに観光需要の拡大だけでなく、大阪が支援に力を入れるベンチャーを含め新産業を育成する契機になるとの声は少なくない。
ギャンブル依存症が増えるとの懸念に対し、政府を中心にしっかりと対応が必要だ。その上で大阪誘致を実現し、新たな経済や企業の成長モデルを示してもらいたい。
(2018/8/31 05:00)