[ オピニオン ]
(2018/9/7 05:00)
量子コンピューティングの開発に巨額資金を投じる米国や中国に対して、日本が伍(ご)していくためにはユーザーの立場を生かした協業型の局地戦で挑むのも一手だ。
これまでコンピューターの開発競争といえばスーパーコンピューター(スパコン)が頂点とされてきた。半年に1回発表されるスパコン性能のランキング「トップ500」は、例えるなら、世界最速を競う「F1レース」。そこでの戦いは国力を示すバロメーターのような意味合いもある。
量子コンピューターの開発競争も方向性は同様だが、目指すゴールはスパコンとは次元が異なる。例えば、ロケットの開発競争。これまでF1で盛り上がっていたところに、いきなりロケットの話が出てきた格好だ。
量子コンピューターはこれまで遠い世界の話とされてきたが、IBMやグーグルなど海外勢の攻勢が目覚ましく、2022年頃にスパコンの性能を超える「ゲート方式の50量子ビット機」が実用段階に入る見通しだ。日本も産学官がそれぞれ動きだしているが、海外ベンダーが投じる研究予算はケタ違いに大きく、日本勢がプラットフォームを含む全面対決に挑んでも勝算は見えにくい。
ならば、基盤となるプラットフォームにこだわらず、アプリケーション(応用ソフト)開発などに人材をシフトし、ユーザーの立場で日本の強みを生かすのも選択肢だ。
プラットフォームを海外勢に依存することへの懸念もあるが、きちんとした知財戦略を持って臨めば「母屋を取られる」ようなリスクは軽減できる。むしろ、逆にアプリ領域で力を発揮して、多様なプラットフォームの上に日本の旗を立てていくような戦略があってもよい。
量子コンピューティングのアプリ開発では情報処理推進機構(IPA)が人材育成プロジェクトの公募を始めている。量子現象を応用した「アニーリング方式」に続き、本流のゲート方式でも公募を始めた。来るべき量子時代に向けて、日本としての道を示すべきだ。
(2018/9/7 05:00)
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