[ オピニオン ]
(2018/9/11 05:00)
世界経済に多大な影響を及ぼしたリーマン・ショックから9月半ばで10年になる。ようやく、その影響を克服しつつある。この10年、債務の圧縮や金融規制の強化で世界が長期的な低成長に追い込まれるという悲観論が台頭した。成長持続という面からみると、課題は依然として残ったままだ。
世界経済は、米中貿易戦争により不透明感が広がっているものの、実体経済は総じて堅調を持続している。象徴が、米連邦公開市場委員会(FOMC)が金融引き締めを加速する姿勢を示し、また、欧州中央銀行(ECB)も年内に量的緩和を打ち切ることを決めたことだ。先進国・新興国ともに内需の牽引(けんいん)力が高まったことが背景にある。経済の底割れを防ぐために、全力を注いできた中央銀行が金融面からの支援は「いらない」と判断した。
ただ、成長戦略面では、いま一つだ。一時期世界を席巻していたインフラ投資熱が冷めつつある。例えば、トランプ米国大統領が2016年の大統領選で公約した「投資計画が10年で1兆5000億ドル(165兆円)」という数字が独り歩きし、実行は伴っていない。中国も固定資産投資は年7%増、17年前半まで続いた20%前後の伸びから大幅に鈍化した。目玉政策の「一帯一路」もインドネシアで高速鉄道建設など遅れが目立つ。
こうしたインフラ投資の鈍化は、各国の財政事情が背景にある。リーマン危機後、各国は数千件に及ぶ経済政策を策定し、財政は急激に悪化。負債が膨らみ支出姿勢はおよび腰になる。
最近、日中両政府によるインフラ協力の動きが出てきた。タイの高速鉄道計画への投資を巡って、9月下旬に北京で官民による委員会の初会合を開く。中国が日本との協力に乗りだす背景には米国との貿易戦争にさらされていることもある。
リーマン危機後は、緊急の“外科手術”が必要だった。インフラ不足は将来の成長の糧が乏しくなるという点で怖い。各国政府が積極的に透明性のある公共投資に踏み切ることが望ましい。
(2018/9/11 05:00)
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