[ オピニオン ]
(2018/9/28 05:00)
人工衛星データの用途が大きく広がろうとしている。数センチメートル級の測位能力を持つ準天頂衛星「みちびき」が11月に運用を開始する予定で、産業界は高精度の測位情報を活用することが可能になる。企業は新産業の創出に向け、気象や防災、海洋資源、交通などの分野で積極的に衛星データを活用すべきだ。
世界中の衛星サービスは衛星テレビや衛星通信など消費者向けの需要が拡大し、毎年3―4%の成長が続いている。また米スペースXが宇宙旅行サービスを計画するなど、宇宙を舞台に新たな産業が立ち上がりつつある。日本も基幹ロケット「H2A」などの先進事例を積み上げているが、産業化の観点では海外から遅れていた。
日本政府はこうした情勢を踏まえ、2017年に「宇宙産業ビジョン2030」を策定。超スマート社会「ソサエティー5・0」の実現に向けた駆動力と位置付け、衛星データの産業利用などを中心に進めている。特に期待されるのが、みちびきだ。米国の全地球測位システム(GPS)の日本版と呼ばれ、日本の真上(準天頂)に1日8時間程度とどまる軌道をとる。
みちびきが発信する電波を使えば、地上の位置を高精度に把握することが可能だ。GPSの機能の補完・補強に加え、災害時の通報や安否確認といったサービスも提供できる。また産業分野の用途では、自動車や農業機械・建設機械の自動走行、3次元地図の作製、児童・高齢者の見守りサービスといった事例が想定される。
一方で課題もある。データをどのように入手して利用すれば良いのか、企業側の知見が十分ではないとされる。そこで経済産業省は19年度からデータの解析・応用などを行える高度な人材を養成する。活用スキルを習得する場を設けて人材の裾野を広げ、アプリケーション(応用ソフト)の開発など新産業の創出につなげる考えだ。
みちびきの運用により、宇宙ビジネスの可能性が広がるのは間違いない。企業は積極的に衛星データを活用し、競争力の高いサービスを創出すべきだ。
(2018/9/28 05:00)