[ オピニオン ]
(2018/11/14 05:00)
欧米に比べ、弱いといわれていたサイバー防衛に、政府がようやく力を入れ始めた。とはいえ、サイバー戦力強化に力を入れている中国、北朝鮮、ロシアなどに比べると費用でも人数規模でも、かなりの開きがある。官公庁システム防衛の重要性もさることながら、IoT(モノのインターネット)や第5世代通信(5G)の進化を考えると、心配なのは研究機関や自治体、民間企業の防衛だ。国をあげた対策が求められる。
「サイバーや宇宙空間など新領域で優位性を保つことが、日本の防衛にとって死活的に重要だ」。8月29日に開かれた安全保障と防衛力に関する懇談会において、安倍晋三首相はこう強調した。
陸海空の枠にとらわれない、新しい形の戦争―。そんな状況は、すでに世界各地で始まりつつある。他国の衛星に向け対弾道ミサイル迎撃ミサイルや高出力レーザーを発射したり、マルウエアを使い軍事機密や技術情報を盗み取ったり。ハッキングで、人工知能(AI)のアルゴリズムを解析し、認識能力をダウンさせAIが役に立たないようにするやり方もある。自動運転の赤信号を青信号に変えることなどが可能になるという。
AIや画像認識、プラットフォーマーなどで中国は圧倒的な力を持ち、国際標準や日本企業も中国を意識せざるを得ない。「中国製造2025」で中国はさらにロボットや工作機械、半導体など日本が強い分野でも市場支配を狙っている。AIと比べてこれらの部門はコア部品やシステムエンジニアリング能力に頼る部分が大きく、キャッチアップは難しいとされる。ただ鉄道車両や航空機の実例を見てもわかるように、最初は模倣でも努力して最後は自分の技術にしてしまうのが中国流だ。人口を武器に世界標準を握られたら勝ち目は薄い。
対策は何か。重要技術情報を極力、外部に漏れないようにするしかないだろう。サイバー攻撃の要諦は相手の弱い部分を突くことだ。IoTと5Gで、この弱い部分は確実に増える。やるべきことは多い。
(2018/11/14 05:00)