[ オピニオン ]
(2018/11/15 05:00)
好調な企業収益や良好な雇用情勢にもかかわらず、経済成長に再び歯止めがかかった。このままだと景気の腰折れが危惧されるが、不振の原因が相次ぐ自然災害の影響で個人消費、輸出、設備投資が振るわなかったことにあるため、10―12月期はこれらの項目が増加に転じ、成長軌道に戻るものとみられる。
内閣府が発表した2018年7―9月期の実質国内総生産(GDP)1次速報値は、年率1・2%減で、今年1―3月期以来2四半期ぶりにマイナスに転じた。項目別にみると、個人消費が前期比0・1%、輸出が同1・8%、企業の設備投資が同0・2%といずれも減少。集中豪雨や北海道の地震、台風21号のため、観光地や百貨店、スーパーを訪れる人が減ったり、大規模停電が起きたり、関西空港が一時閉鎖されたことなどが影響したようだ。
しかし、こうした自然災害のマイナスの影響は徐々に解消しているため、10―12月期については「潜在成長率を上回る成長に戻る」とみるエコノミストが多い。安倍晋三首相も「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)はしっかりしている」と強調、防災・減災の緊急対策に力を入れる構え。
このほか、経済統計も好材料が揃う。10月の鉱工業生産予測指数は増産計画となっているほか、設備投資の先行指標とされる機械受注も回復基調にあり、今後の設備投資の増加を示す。
先行きの見通しは明るいものの、米中貿易戦争が激化すると状況は一変する。貿易戦争が世界経済に不確実性をもたらすと、世界的な貿易量が縮小し、わが国の輸出が打撃を受ける。また中国経済が減速傾向にあることも、輸出を阻害する要因として気がかりだ。
現在行われている18年9月中間決算発表では、過去最高益を計上する企業が相次いでいる。堅調な世界経済や円安・ドル高基調を背景に、輸出企業などの採算が改善したためだ。これらの企業は好業績を生かし、さらに投資を積極化して生産性や収益性を向上させ、経済全体の成長を後押ししてほしい。
(2018/11/15 05:00)