[ オピニオン ]
(2018/11/16 05:00)
自動車業界がサービス事業へのシフトを急いでいる。例えば、トヨタ自動車とソフトバンクとの共同出資による移動サービス(=モビリティー・アズ・ア・サービス〈MaaS〉)事業での新会社設立や、月額車を所有せず利用するサブスクリプションサービス開始など、矢継ぎ早に施策を打ち出しつつある。視線の先は、未来のモビリティー時代を見据えているようだ。
トヨタの豊田章男社長は1月の米家電・IT見本市「CES」で「トヨタを、車を作る会社から、モビリティー(移動手段)に関わるあらゆるサービスを提供する会社にモデルチェンジする」と述べた。最近の動きこそ、この「モデルチェンジ」の具体策だ。
ソフトバンクとの新会社では、オンデマンド型の移動サービスと、トヨタが開発する自動運転の電気自動車を用いた物品販売や医療などのサービスを事業化する。両社が組むことで、未来の社会を予見しつつITを駆使してそれを現実のものとする力が強まることを期待したい。
一方、2019年初頭に提供開始するサブスクリプションサービスでは、定額料金で税金や車検などの諸費用をまかなったうえで、好きな車に乗り継げるサービスを検討している様子。一連のサービスを担うのが、地域の有力者が多いとされるトヨタの各地のディーラーだ。
だが、こうしたサービス化が本格化すればするほど、従来の売り切り型の新車販売台数は減っていく。サービス事業者の役目は顧客が望む最適な車や移動手段を提供すること。トヨタ車ひいては自動車が、常に顧客が望む最適な手段とは限らない。他の乗り物や他メーカーの車を組み合わせて提案せざるを得なくなるはずだ。
トヨタが打ち出したサービス業シフトの方向性は、日本の自動車業界でも先んじている。しかし、自動車という非常に裾野の広い業界で多くの従業員と取引先、強固な事業基盤を持つだけに、モデルチェンジは簡単ではない。まず新しく生み出すサービスが、魅力的で使いやすいかどうかが焦点になる。
(2018/11/16 05:00)