[ オピニオン ]
(2018/11/21 05:00)
“カリスマ”と呼ばれる強い指導力を持つリーダーほど、企業統治が機能することに力を注がねばならない。個別企業の問題とは別に、不正を防ぐ仕組みを考える契機とすべきだ。
日産自動車のカルロス・ゴーン会長とグレッグ・ケリー代表取締役の逮捕は産業界に大きな衝撃を与えた。日産の西川(さいかわ)広人社長によると、報酬を小さく見せかけたこと、私的な目的で投資資金を使ったこと、経費の不正使用の3点で重大な不正が認められた。同社は22日に開く取締役会で2人の解任を決める。
事件の詳細は必ずしも明らかではない。ゴーン容疑者が兼務する仏ルノーの最高経営責任者(CEO)の職務への波及も考えられる。ただ検査不正に続く不祥事が、日産にとって大きな痛手であることは間違いない。中小企業を含む取引先の多くは、日産の再生を期待している。株主や社会一般の信用を取り戻すよう努めてほしい。
産業界としては、この事件をカリスマ的リーダーによる企業統治のあり方を検証するひとつのケースとして注目したい。西川社長は「1人に権力が集中していたことが原因」との認識を示した。日産の再建に多大な功績のあるゴーン容疑者だから問題が起きたのかどうか。一部で過大といわれた報酬の決め方は適切だったのか。
事件は社内通報によって発覚したという。代表取締役3人のうち2人が関与した不祥事の社内調査には困難があったろう。調査に関わったのは数人のみで、逮捕当日まで他の取締役も知らなかった。同社の内部監査体制が機能したかどうかの判断には、さらに情報がほしい。
東京証券取引所は6月にコーポレートガバナンス・コードを改訂し、CEOの選解任手続きや客観性・透明性ある報酬制度の策定を上場企業に求めた。4―5年程度でトップ交代する企業には、なじみにくい印象もある。しかし近年は日本でも、長期にリーダーシップを発揮する経営者が評価される傾向にある。強いリーダーほど、不正を起こさない企業統治体制が重要になる。
(2018/11/21 05:00)