[ オピニオン ]
(2018/11/23 05:00)
外国人労働者の受け入れを拡大する出入国管理・難民認定法(入管難民法)改正案が臨時国会で審議されている。少子高齢化による人手不足が深刻化する中で、単純労働を含めた分野で、政府は外国人に新たな働き手を担ってほしいという考えだ。産業界も基本的には、賛成だ。ただ、技能実習制度をそのままにするなど、既存制度を維持しており、中途半端な印象は拭(ぬぐ)えない。政府は、外国人労働者受け入れの将来ビジョンを明確にすることが必要だ。
厚労省によると、外国人労働者数は約128万人(2017年10月末現在)で、全就業者に占める割合は約2%となった。12年には約65万人だったため、5年でほぼ倍増した形だ。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、16年時点で日本は米国やドイツよりは少ないものの、スイス、ベルギー、英国、カナダといった欧米の移民受け入れ推進国を上回っている。すでに事実上の“移民大国”というのが実情だ。
受け入れ拡大は、少子高齢化の進展に伴う人手不足に対応する。労働条件が厳しい建設や外食、介護といった分野、人口減少地域などは特に深刻なためだ。外国人労働者を増やさないと、日本の経済力や規模を維持できなくなるという状況だ。
一方で、単純労働者の受け入れとして活用されている技能実習制度はそのままだ。近年は、留学生のアルバイトのルートも増えている。外国人労働者の出身国は賃金の低い国に徐々にシフトしており、将来的に優良な外国人が日本に来てくれなくなる可能性がある。また、地域における受入体制も整っていない。実際は、長く住む人が増え、生活者として受け入れていくことが求められている。
政府は外国人労働者の受け入れにあたって、内外労働者の処遇均等の保証のほか、地域住民との共生に国・自治体・企業が連携して取り組むなど基本方針を示すべきだ。その上で、地域ごとの協議会を設けるなど、外国人と地域住民との共生を進めていくための枠組みづくりが求められる。
(2018/11/23 05:00)