[ オピニオン ]
(2018/11/28 05:00)
海洋プラスチック汚染問題に端を発した脱プラスチックの議論がかまびすしい。石油化学製品を悪者にするだけでは根本的な解決にならず、社会を誤った方向へ誘導しかねない危うさすら感じる。今、真に話し合うべきは脱プラではなく、脱プラ使い捨てだ。
日米欧や中国など主要国だけの合成樹脂生産量で年間3億トンを優に超える。日本プラスチック工業連盟によると、包装におけるプラ使用割合は2016年で日本37・7%、米国34・0%、西欧39・9%だ。その代替を探すことの難しさは容易に想像できるはずだ。それでもBツーC(対消費者)ビジネス中心に脱プラの動きが徐々に広がるのは、環境問題に無関心のレッテルを貼られるレピュテーションリスクを避けるためだろう。
石油化学メーカーが製造した汎用樹脂を成型加工したレジ袋や容器、カトラリーなどを使用後に回収して、再び有効活用する。各国・地域でプラ資源循環システムが完璧に構築できれば、理論的には廃棄物ゼロとなる。当然、システムからこぼれ出るプラゴミは一定量存在する。そういう管理の難しいプラ製品にとって、再び脚光を浴びている生分解性樹脂は一つの解決策となりうる。
プラスチック循環利用協会によると、16年の日本の廃プラ有効利用率は84%と高い。そのうちマテリアルリサイクル(再生利用)は23%で、燃料として焼却して使うサーマルリサイクル(エネルギー回収)が57%を占める。埋め立てが主流の欧米は温室効果ガスを排出するサーマルリサイクルに懐疑的だ。もちろん地球温暖化は海洋プラ汚染とともに、人類が直面する大きな社会課題だ。産業界が中心となって、発生した二酸化炭素を回収・再利用する技術確立に一層取り組まなければならないのは自明の理だ。
ただ、現在の脱プラは廃棄や温室効果ガス、生分解性プラなどの議論が混在したまま過熱して尻切れトンボのような状態だ。いま一度冷静さを取り戻し、何はさておき現実離れした脱プラ論は捨てた方がいい。
(2018/11/28 05:00)